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お見合い -6

家族やワンコと共に学生時代の友人を訪ねた男は酒を酌み交わしながら近況や想い出話に花を咲かせ、妻は家族ぐるみの付き合いになっている友人の奥さんと料理をしながら、またいつかのようにみんなで旅行をしようと話し、息子の家族は子供たちの希望に従い海で遊びそれぞれの時間を楽しく過ごす。
男とワンコは友人宅、妻と息子たちはホテルで金曜、土曜と二泊して日曜日は友人を訪ねた後の恒例となっているディズニーランドで遊ぶことにする。

ディズニーランドでは混合ワクチン接種証明書を用意すればワンコを預かってくれるが19歳の誕生日を間近にする彼女を独りにすることは避けて昨年と同様、男とワンコは一旦家に帰り連絡があり次第迎えに戻ることにする。
一時間ほどかけて帰宅した男がワンコ散歩を済ませて夕方までどうしようかと思案を巡らせているとスマホがアユからの着信を知らせる。
「アユさ……アユ、どうした??元気にしている??」
男がこれまでのアユではなく、アユさんと呼びそうになったことを気付かぬふりで返事をする。
「うん、元気が有るような、無いような……」
「声に元気がないようだね。暑いからって食事や睡眠をいい加減にしちゃダメだよ」
「ありがとう、心配してくれるの??」
「えっ……あたりまえだろ……」
「じゃぁ、食事をご馳走してくれる??今はワンちゃんと二人だけでしょう。ハンバーガーやおにぎり、コンビニ弁当でもいいよ」
「オレがワンコと二人だとどうして知っているの??」
「奥様が電話で教えてくれた。鮎ちゃんがもう会わないって決めたのなら余計なお節介だけど、そうでないなら鮎ちゃんから連絡しないとダメだよ。あの人は肝心な時に優柔不断だからって……お腹空いた、何か食べたい」
「そうか、お腹が空いているのか……ありがとう、迎えに行くからドライブの準備をして待っていてくれる??」
「うん、分かった、待っている」

小首を傾げてほんの少し考えた男は電話を一本入れ、散歩を済ませてお気に入りの場所で横たわっているワンコにハーネスを付けてリードをつなぎ、
「お腹を空かせて倒れそうな女子がいるから助けに行こう」と、声をかけて抱き上げる。
もうすぐ19歳になる白柴のおばあちゃんワンコで柴犬のブリーダーをしている友人宅で生まれたのだが、毛色が白ということで引き取り手がなく1年分の食事を付けるから引き取ってくれないかと頼まれたので引き受けることにした。
十年ほど前にはテレビCMで”お父さん犬“として有名になったワンコのお陰もあって散歩中に、よく似ていますねとか触ってもいいですかと声をかけられることもしばしばあった。
CMのワンコは北海道犬なので犬種は違うが、柴犬の方が馴染みがあるので白柴が人気になったと聞いたことがある。
元々抱っこが好きで寝る時は同じベッドで腕枕、寒くなると潜り込んで男の股間を枕にして寝るので、チンコ枕と男とその妻は呼んでいる。

「待たせちゃって、ゴメン」
「私ンチの近くだからしょうがないでしょう。それより、ごめんなさい、ワンちゃんと楽しんでいる処を邪魔しちゃって」
「連絡してもらって嬉しかった。今まで通り付き合ってくれと言えなかったから……」
「ウフフッ、奥様もそう言っていた。連絡を待っているだけじゃダメだよって、さすがに奥様はあなたのことをよく分かっている……ご主人の浮気を奨励する奥様はすごいよね」
「浮気じゃないって、オレは常に本気。妻と過ごす時間もこれ以上はないほど濃厚」
「例えば……教えられる範囲でいいよ」
「妻の背後を通るときは必ず尻を撫でるか胸を揉む。可能な限りチュッとキスをする」
「えっ、私の時と同じなの??常に本気って言葉を信じる」
夜寝る時は必ず腕枕、それを外した後は手を握るか身体に必ず触れるとはさすがに言えない……アユの笑顔は癒される。

「アユ、運転するのとワンコを抱っこするのとどっちがいい??」
「ワンちゃんを抱っこする。噛んだりしないでしょう??」
「大丈夫だよ。人間好き、ワンコ好きのワンコだから」
走り出した車は鰻屋の前で止まり、すぐに戻ると言いおいた男は店に入る。

アユの腕の中で大人しくしていたワンコが男の持つ紙袋に反応し、頭を上げて鼻をクンクンさせ早く見せろ、食べさせろと催促する。
「昭和公園、秋川渓谷、多摩湖、奥多摩湖、鰻重をどこで食べようか??」
「ワンちゃんが我慢できるか不安だけど、秋川渓谷に行きたい」
秋川まで車を走らせて河原に下り、レジャーシートを広げて鰻重を広げるとお座りをするワンコの口からタラァ~と涎が滴る。
男はそんなワンコに構うことなくポットに入れてもらった肝吸いを紙コップに移して鰻重の蓋を取る。
ハァハァッ、ゴクッ……ワンコは蒲焼と男の顔を交互に見て、ヨシと声がかかるのを今や遅しと待ち構える。
ワンコ用皿に蒲焼を移してヨシと言うと、もうすぐ19歳とは思えぬ食欲であっという間に平らげて皿をペロペロ舐めて口の周りを舌で拭う。
満足したワンコはその場に伏せて鼻をヒクヒクさせていたかと思うと横になり、目を閉じる。
本能のまま正直に行動するワンコを見ていると、アユも男も気持ちの隅に引っかかる澱のようなモノが氷解して晴れやかな気持ちになってくる。

「アユ、この間、8月最終週は予定がないって言ったけど、どうだろう、一緒に過ごしてもらえないだろうか??」
「えっ、クククッ、水曜日の午後か土曜日ならいいよ。予定はないから付き合ってあげても……とびっきりエッチな事をしてみたいなって思っていたの」
「大好きだよ。善は急げって言うから水曜日の午後を予約したい」
「分かった、水曜の午後の予約を受けとくね。あなたと付き合うようになって絵を描くのと同じくらいエッチなことが好きな女になったの……責任取ってもらうよ」

大好きな蒲焼を食べて腹がくちくなったワンコは暑さを忘れたかのように眠り、それを確かめた男はアユを抱き寄せる。
「ダメ、ワンちゃんは寝たけど川遊びしている子供たちが見ているよ」
「正しい男女の付き合いを教えてあげるのは大人の責任だろ……そんなに嫌がるなら我慢するよ」
立ち上がった男は石を選んで拾い上げ、水切りをして得意そうな笑みをアユに向ける。
石の選び方や投げ方を教わったアユが水切りを始めると周りで遊んでいた子供たちも始める。

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ちっち

Author:ちっち
オサシンのワンコは可愛い娘です

アッチイのは嫌
さむいのも嫌
雨ふりはもっと嫌・・・ワガママワンコです

夜は同じベッドで一緒に眠る娘です

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