彩―隠し事 108
萌芽 -4
栞の予約してくれた個室で昼食を摂りながら生々しい話を聞いた優子の午後は、仕事に集中しているときは忘れても、ほんの少しでも時間に余裕が出来ると栞の痴態が脳裏をよぎり、優子から彩に変身して健志に抱かれる自らの姿を想像してしまう。
フゥッ~……思わず溜息を漏らしてしまい、
「鍬田さん、大丈夫ですか??何かお疲れのようですね」と、同僚に心配される始末だった。
それでも業務に支障をきたすことなく終業時刻が近付くと栞が近付いてくる。
「優子、課長との話は一時間くらいでしょう??いつものカフェで待っているからね……課長の予定を詳しく聞いてないから教えてほしいの、いいでしょう」
「分かった、終わり次第すぐに行くから待っていて」
課長の話しは栞に聞かされて予期した通り転勤に関するものであった。
三連休後の着任で継続中の案件の引継ぎなどで来週途中までは今のままらしい。
優子がリーダーとなっているプロジェクトは新任課長も期待されているということで、進捗状況次第で優子に新たな肩書を検討していると聞かされた。
栞との関係を直接的に口にしたわけではないが、優子との親しい関係から聞いているかもしれないと感じているらしいことは話しの端々で感じられ、最後に栞とはいつまでも親しい関係を続けてほしいと言われた。
「ふ~ん、課長はそんな事を言ったんだ。フ~ン、優子の事を信頼しているんだね、私との関係を知られていると思っても平気なんだもん」
「そこは栞と私の解釈は少し違う。私にとって栞は何者にも代えがたい大切な親友。課長はそれを知っているから安心していられる、私を信用しているとすれば、それは仕事についてだよ」
待ち合わせのカフェでチョコブラウニーを頬張る栞の口元に着いた汚れを指先で拭い取り、舐めとった優子は、
「栞もそう思うでしょう??」
「うん、優子が言うんだから間違いない。信じる……来週までいるなら週末に会ってもらおうかな、誘ってみよう」
「栞、いい加減にしなさいよ」
「だって、大好きな旦那様がボイスレコーダーを再生して聞いちゃったの……私以外の男を交えて栞のストリップから初めて乱交パーティをしようか、楽しみに待っていてくれよって課長が言ったのを……それで、涎を流さんばかりに瞳をランランと輝かせて言うの。ストリップを見せて何人の男か知らないけど抱かれてこい。その様子を録音して来いって」
「大丈夫なの、栞??」
「課長は転勤するからその日が最後って録音されてなかったんだよ。それに凄いんだもん、その時の旦那様が……思い出しちゃう。チンチンが腹を打ってベチョベチョの先走り汁が垂れるんだよ……」
「栞、よしなさい。聞こえちゃうよ」
「えっ、あっ、家でもないし個室でもない。ごめん、聞かれていないよね??」
「多分、大丈夫だと思うよ」
栞と別れて駅に向かう途中、夫から帰宅が遅くなるので先に寝ていいよと連絡があった。
料理は嫌いでないものの栞を中心にしてご主人と課長との情交を聞いた後では一人っきりの食事は寂しすぎる。
こんな時こそ健志に寄り添ってもらいたいと思うけど昨日食事を共にしたばかりだし、来週末の三連休は一緒に過ごせると話した後でもあり今日は連絡することを躊躇ってしまう。
電車の車窓を走る景色は見慣れたもののはずなのに新鮮に映り、気持ちが変われば感じ方も変わると実感する。
自室のベッドで寝ている私に帰宅した夫が覆い被さるとこの身体はどんな反応をするのだろう。
肌を合わさなくなって久しいし夫が浮気をしていることは知っている。
それでも愛し、愛されて一緒になった二人だという事実は消えない。
今でも夫の事は嫌いではないし、優子も彩と名乗って成熟した女の性欲を健志相手に満足させている。
そして健志と付き合い始めると、夫の帰宅が遅くなっても、あるいは出張にかこつけて浮気相手と旅行を楽しんでいるだろうと思っても以前のようにイライラして気持ちを乱すことはなくなったし、意識することなく優しく接することが出来るようになった。
浮気する夫に対する腹いせで自分も浮気しているからということではなく、この人が一番大切だ愛している、絶対に裏切ることはないと思っても長い人生、もっと大切だと思える相手に巡り合うこともあるだろうし、これが一番、これ以外にないなどと断言するには私の一生は長すぎる。
そんな事を考えている内に自宅の最寄り駅が次だとアナウンスされて我に返る。
単身者用マンションも多いこの駅周辺は一人で暮らすにも不自由がなく、夫と疎遠になってから時々利用する焼肉屋に入る。
「いらっしゃい……いつもと同じでいいですか??」
「お願いします」
ヨガを欠かさない優子は焼肉ではカロリーを意識してミノやレバー、ハツの内臓系とタンなどとビールで腹を満たす。
美味い食事に満足すると卑猥な思いから解放されて本屋に入る。
女性雑誌とスイーツのレシピ本を手に取り、目的もなく店内を見て回るとエロ漫画コーナーで足が止まり、周囲に見知った顔がないことを確かめて凌辱系の漫画を一冊、手に持つ二冊の間に挟んでレジに向かう。
店を出た優子は頬を緩め、今の私は優子ではなく彩、エッチでスケベなもう一人の私と言葉に出さずに囁いて急ぎ足になる。
栞の予約してくれた個室で昼食を摂りながら生々しい話を聞いた優子の午後は、仕事に集中しているときは忘れても、ほんの少しでも時間に余裕が出来ると栞の痴態が脳裏をよぎり、優子から彩に変身して健志に抱かれる自らの姿を想像してしまう。
フゥッ~……思わず溜息を漏らしてしまい、
「鍬田さん、大丈夫ですか??何かお疲れのようですね」と、同僚に心配される始末だった。
それでも業務に支障をきたすことなく終業時刻が近付くと栞が近付いてくる。
「優子、課長との話は一時間くらいでしょう??いつものカフェで待っているからね……課長の予定を詳しく聞いてないから教えてほしいの、いいでしょう」
「分かった、終わり次第すぐに行くから待っていて」
課長の話しは栞に聞かされて予期した通り転勤に関するものであった。
三連休後の着任で継続中の案件の引継ぎなどで来週途中までは今のままらしい。
優子がリーダーとなっているプロジェクトは新任課長も期待されているということで、進捗状況次第で優子に新たな肩書を検討していると聞かされた。
栞との関係を直接的に口にしたわけではないが、優子との親しい関係から聞いているかもしれないと感じているらしいことは話しの端々で感じられ、最後に栞とはいつまでも親しい関係を続けてほしいと言われた。
「ふ~ん、課長はそんな事を言ったんだ。フ~ン、優子の事を信頼しているんだね、私との関係を知られていると思っても平気なんだもん」
「そこは栞と私の解釈は少し違う。私にとって栞は何者にも代えがたい大切な親友。課長はそれを知っているから安心していられる、私を信用しているとすれば、それは仕事についてだよ」
待ち合わせのカフェでチョコブラウニーを頬張る栞の口元に着いた汚れを指先で拭い取り、舐めとった優子は、
「栞もそう思うでしょう??」
「うん、優子が言うんだから間違いない。信じる……来週までいるなら週末に会ってもらおうかな、誘ってみよう」
「栞、いい加減にしなさいよ」
「だって、大好きな旦那様がボイスレコーダーを再生して聞いちゃったの……私以外の男を交えて栞のストリップから初めて乱交パーティをしようか、楽しみに待っていてくれよって課長が言ったのを……それで、涎を流さんばかりに瞳をランランと輝かせて言うの。ストリップを見せて何人の男か知らないけど抱かれてこい。その様子を録音して来いって」
「大丈夫なの、栞??」
「課長は転勤するからその日が最後って録音されてなかったんだよ。それに凄いんだもん、その時の旦那様が……思い出しちゃう。チンチンが腹を打ってベチョベチョの先走り汁が垂れるんだよ……」
「栞、よしなさい。聞こえちゃうよ」
「えっ、あっ、家でもないし個室でもない。ごめん、聞かれていないよね??」
「多分、大丈夫だと思うよ」
栞と別れて駅に向かう途中、夫から帰宅が遅くなるので先に寝ていいよと連絡があった。
料理は嫌いでないものの栞を中心にしてご主人と課長との情交を聞いた後では一人っきりの食事は寂しすぎる。
こんな時こそ健志に寄り添ってもらいたいと思うけど昨日食事を共にしたばかりだし、来週末の三連休は一緒に過ごせると話した後でもあり今日は連絡することを躊躇ってしまう。
電車の車窓を走る景色は見慣れたもののはずなのに新鮮に映り、気持ちが変われば感じ方も変わると実感する。
自室のベッドで寝ている私に帰宅した夫が覆い被さるとこの身体はどんな反応をするのだろう。
肌を合わさなくなって久しいし夫が浮気をしていることは知っている。
それでも愛し、愛されて一緒になった二人だという事実は消えない。
今でも夫の事は嫌いではないし、優子も彩と名乗って成熟した女の性欲を健志相手に満足させている。
そして健志と付き合い始めると、夫の帰宅が遅くなっても、あるいは出張にかこつけて浮気相手と旅行を楽しんでいるだろうと思っても以前のようにイライラして気持ちを乱すことはなくなったし、意識することなく優しく接することが出来るようになった。
浮気する夫に対する腹いせで自分も浮気しているからということではなく、この人が一番大切だ愛している、絶対に裏切ることはないと思っても長い人生、もっと大切だと思える相手に巡り合うこともあるだろうし、これが一番、これ以外にないなどと断言するには私の一生は長すぎる。
そんな事を考えている内に自宅の最寄り駅が次だとアナウンスされて我に返る。
単身者用マンションも多いこの駅周辺は一人で暮らすにも不自由がなく、夫と疎遠になってから時々利用する焼肉屋に入る。
「いらっしゃい……いつもと同じでいいですか??」
「お願いします」
ヨガを欠かさない優子は焼肉ではカロリーを意識してミノやレバー、ハツの内臓系とタンなどとビールで腹を満たす。
美味い食事に満足すると卑猥な思いから解放されて本屋に入る。
女性雑誌とスイーツのレシピ本を手に取り、目的もなく店内を見て回るとエロ漫画コーナーで足が止まり、周囲に見知った顔がないことを確かめて凌辱系の漫画を一冊、手に持つ二冊の間に挟んでレジに向かう。
店を出た優子は頬を緩め、今の私は優子ではなく彩、エッチでスケベなもう一人の私と言葉に出さずに囁いて急ぎ足になる。