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偽者 ~PRETENDER~ -47

佐緒里と内藤 -19

ワイングラスを手にした佐緒里は小首を傾げ、口元を緩めて内藤のグラスにスパークリングワインを注ぎ込む。
内藤の腕の中で顔だけ振り向いた佐緒里は、
「喉が渇いたからシュワシュワを飲みたい」
空になったグラスを振り、口移しで飲ませてくれと催促する。
背中越しに抱きかかえていた佐緒里を横抱きにしてワインを含むと、そっと目を閉じて頬を赤らめる。
そんな佐緒里の顎に指をかけて唇を合わせると、ゴクッと唾を飲む音がして内藤の背中を抱く手に力が入り緊張が伝わってくる。
口の中に満足の証を吐き出しアナルセックスまで済ませて、今更どうして緊張するのだと思いながらも、店では凛とした佇まいで客に接するのを思い出して自然と頬が緩む。

ゴクッ……キスと共にワインを流し込むと白い喉が上下して飲み込み、そっと目を開けて、
「美味しい」と囁く。
再び唇を合わせて舌を絡ませると、ズズズッと音を立てて啜るのでドロッと唾液を流し込むと、それも白い喉を上下して嚥下する。
「ウフフッ、幸せ。あなたと二人きりの時間は何も考えずに自然なままでいられる……迷惑??」
横抱きの姿勢を自ら動いて内藤の太腿を跨ぎ、首に両手を回して覗き込む視線は嘘を許さないよと赤く燃える。
「好い事を教えてあげるよ……この部屋に招いた女性は佐緒里が初めてだよ」
「ほんとう??女の人の気配がないと感じていたけど、ほんとうなの??まさか、昨日引っ越してきたなんて言わないよね??」
「そうだと面白いけど、そんなわけないよ。佐緒里が初めてだよ」
「ウソで固めたあなたの人生にもある真実……嬉しい」
「言っとくけど、オレの嘘はすべて佐緒里が原因。佐緒里と関わりのない処にオレの嘘はほとんどないよ」
「そうだった……フリーで来店したあなたを見た瞬間、子宮がビビッと震えて一目惚れしたのが始まりだった。二度と男を信じないと決めていたから美香ちゃんのお客にしたんだけど、ウフフッ、指やオモチャじゃ私の女の子は満足できないって夜泣きするの」
「それは重症だな。そこに佐緒里のご両親が縁談話を胸に訪れるってことになって、飛んで火にいる夏の虫。オレがちょうどいいカモだった、そう言うことか」
「気付いているくせに、いやな男。カモじゃなく、抱いてもらう切っ掛けになるかもって誘った。美香ちゃんには内緒だよ、ばれないよね??」

「誰でも嘘は一つだけ許される。生きる苦しみを和らげてあげようという神様の優しさでね」
「ほんとう??」
「多分、そうだとオレは思っている。佐緒里とオレの美香ちゃんに対する一つの嘘、神様は許してくれるよ」
「うん、あなたの言葉を私は信じる。神様を信じていいかどうか分からないけどね、愛を誓った男に裏切られちゃったから……」
「オレが佐緒里を裏切ると……怖いな、絶対に裏切らないって約束する」
「そうだよ、二度と男は信じないって決めていたのを、あなたならって信じてエッチな妄想をあなたに教えた。今の私にとってあなたが一番大切な人」
言葉を口にすることなく内藤は背中を撫でて髪に手櫛を入れる。
「気持ち好いけど恥ずかしい……ハダカンボでシャツだけを着けているんだよ。ボタンを外したくないの??」
「素っ裸の佐緒里だけを欲しいわけじゃない。衣装をまとった佐緒里も魅力的だよ」
「えっ、ウフフッ……そんな事を言われると照れちゃうじゃない……お腹が空いた」
「よし、何か作ろうか。待ってなよ」
「そうじゃないの、コンビニでいいからあなたと歩きたい、だめ??」
「分かった、行こうか」
内藤から離れて着替えるためにシャツのボタンを外そうとする佐緒里に、
「そのままでいいよ」
「ブラなしで??……ほんの少し化粧する時間を頂戴」

化粧を施してブラシで髪を整えた佐緒里はショーツを手に取って内藤に向けてヒラヒラする。
内藤が首を振ると妖しい笑みを浮かべてベッドに落とし、ノーブラノーパンの魅力的な身体をジーンズと男物のオフホワイト、ウールシャツで覆う。
「可愛いって言うより、好い女……行こうか」
チノパンにオフホワイトのカットソーを合わせた内藤が手を伸ばすと、指を絡めてドアに向かう。
「女はね惚れた男との思い出は忘れないモノなの。ノーブラノーパンで手をつないで歩いたことを忘れないと思う……気が重い??」
「男は惚れた女の値打ちで器量が分かる。佐緒里と歩くオレを知り合いが見ると、オレの評価が上がるだろう」

「こんばんは、お買い物ですか??」
「そうだよ、私はいつもの通り荷物持ち。夫婦円満が望みなら亭主は妻の言葉に従えばいい……内藤君も覚えておくといいよ」
「ウフフッ、そうね。それが家庭円満の基。女は男次第で変わる、それは妻になっても同じ……あなた、お名前は何ておっしゃるの??」
「佐緒里と申します」
「佐緒里さん、好いお名前ね。内藤さんは好い男よ、私が保証する。仲良くね」
「はい、内藤さんといつまでも仲良くしていたいです」
「佐緒里さんの笑顔が素敵。隠し事もなく心から笑っている、幸せな証拠ね……ごめんなさい、余計な事を言ってお出かけの邪魔をしちゃって。気をつけてね」
「いつも気にかけていただいてありがとうございます。失礼します」
「失礼します」

老夫婦に向かって頭を下げる内藤にならって佐緒里も頭を下げる。
歩き始めた夫婦が角を曲がって見えなくなる見送った二人が歩き始めると、
「なんか、幸せな気分……あんなご夫婦と仲の良さそうなあなたが悪い人のはずがない」
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ちっち

Author:ちっち
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さむいのも嫌
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夜は同じベッドで一緒に眠る娘です

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