2ntブログ

休館日 -2

「濃厚なのをお願い……しばらく抱いてもらってないから、身体が火照って熱い」
窓際に立って駅に続く通りを挟んで向かい側にある公園を眺めていると声がかかる。
ウォークインバスルームのドアから上気した顔を覗かせたアユは濃厚なセックスを催促し、男に向けてシャツを投げると床に落ちる。
シャツを拾うと続けてスカートを投げる。
「アユがこんなに行儀が悪いとは知らなかった」
「本当の私は行儀が悪いの。だから行きたい所があるって嘘をつくし、抱いてもらうためにホテルの予約もする。嫌いになった??……クククッ」
拾い集めたスカートとシャツを丸めて顔を押し付け、息を吸い込んだ男は満足気な表情で、アユの好い匂いがすると呟き、
「悪女は好い女の条件だよ。今、どんな格好をしているの」と、問いかける。
「教えてあげない。知りたい??……ヒントをあげようか、どうしようかな」
ドアの向こうに顔を引っ込めたアユは手だけを出して丸めたショーツを投げ、男が拾うと同じように身体も顔も隠したままブラジャーを投げる。

再び身体を隠したまま顔を覗かせたアユは、
「ヒントをあげたから、どんな格好なのか分かるでしょう??……用意できたよ」
全てを脱ぎ捨てて素っ裸になった男はアユの魅力に引き寄せられるようにバスルームに入る。
淡いピンクのバブルバスはアユの身体を隠して上気した顔だけを見せる。
「可愛い……白くて成熟した身体を飾るピンクはセックスに飢えたアユでさえ清楚に見せる魔法の色だ」
バスルームはほんのり甘い芳香で満たされて男はシャツとスカートで感じた香りを思い出して表情を綻ばせる。
「あっ、笑った。私の事をバカにしてる……」

「入るよ」
言い終えるや否や向かい合って泡に埋まる。
「誤解しないでくれよ。シャワージェルの香りがアユのシャツの匂いと似ていたんだよ……好い匂いがした」
「クククッ、大好き……こんなじゃ嫌、いつものように抱っこして」
泡の上に身体を晒すことなく向きを変え、太腿を跨いで背中を男の胸に預けたアユは、
「何の憂いも感じずに、こんな時間を過ごしたかったの」
「ごめんな。アユの部屋じゃ妙にリラックスしてダラッとしてしまう」
「うぅうん、それが嫌だと言うんじゃないの。あなたの寝顔を見るのが好きだよ……イヤンッ、オッパイをクチュクチュされると気持ち善くなっちゃう」
アユの反応に気を良くした男の手が肌を這い回ると、
「ウッウッ……クゥッ~、気持ちいぃ。場所が変わると昂奮する、ハァハァッ……好き。呼んでくれて、ありがとう」
「急だったのに来てくれてありがとう」
「いつでも、望んだときに会えるわけじゃないから私は恋に恋する女でもあるの。そんな私にサプライズを用意してくれる、あなたが好き」
「寂しい事を言うなよ」
「ウフフッ、分かってる。冗談よ、冗談……絶対にお泊りはしないって言うあなたが、私と一緒に大阪で一泊してくれたでしょう。無理はしないで、今のままでいいの。無理をするとダメになるような気がする……ほんのしばらくの間だけど、あなたと離れた時間は本当に辛かったから」
男の言葉を誤解して別れを告げたときの事を口にする。

男は背後からアユを抱きしめたまま頬を擦り、鼻梁に指を滑らせて唇をなぞり言葉を封じてしまう。
話しを続けると、どんな行き違いが生じるか分からない。
互いの気持ちを気遣うことで誤解することもある。
雄弁は銀、沈黙は金という言葉が脳裏をよぎる。
唇をなぞる指に舌を絡ませるアユは気持ちの奥に宿る思いを伝えようとして口に含み、フェラチオを施すように顔を前後する。
「気持ちいいよ。温かい口腔に含まれて優しく刺激されると幸せな気持ちになる」
チュルチュルッ……男の言葉にアユの表情が綻び、口に含んだ指を抜き取って手の平に頬を擦りつけ、
「私のために無理しなくていいからね。あなたに我がままを言うことがあるかもしれないけど、水曜日と土曜日に会ってくれる。それだけで嬉しいの……ウフフッ、本心を言うと、今日のようなサプライズに慣れちゃう自分を想像するのが怖い」
「そうか……オレはゴチャゴチャ考えずに、大切の人と過ごす時間を大切にするよ」
「ウフフッ……奥様が一番大切だってはっきり言ってくれるのが安心できる。嘘で女性の歓心を買おうとしないのがいい……目の前の事に常に本気なんだよね、あなたは……今は本気で抱いて……」

シャワージェルまみれの身体を擦りつけ、唇を合わせながら手を這わせて汗を流す。
ハァハァッ、ウッウゥッ~……徐々に二人の息が荒くなってセックスの前戯と見紛うようになり、手と身体の動きが激しさを増していく。

休館日 -1

「もしもし、明日は月曜だけど予定がある??」
「特にないけど、あなたは実家でしょう??」
「そうだよ。明日、帰るけど飛行機に欠航が多くて新幹線に変更。それで、東京駅か新横浜駅まで来ないか??」
「いいの??」
「あぁ、来られるならね。開店準備のために17時着で平気だろう??」
「もう少し遅くても平気だよ、お通しの手間を省けばいいんだから……ウフフッ。名古屋じゃダメ??行きたいところがあるんだけど、ダメかなぁ??」
「名古屋か、好いよ。待ち合わせの時刻はアユが決めていいよ」
「今日はお店が休みだから早寝する。ちょっと待って、時刻表を確かめるから……始発に乗れば名古屋駅着が7時34分、それにしようか??」
「もう少し、遅くしてくれるとありがたい」
「え~っと、じゃぁ、名古屋着が9時半頃は??」
「それ位の時刻なら大丈夫だよ。実家を早朝出発で18時頃帰宅はチョイと気になるからな」
「奥様が気になる??」
「当然だろ、追い出されちゃ困るから」
「もしも追い出されたら、たとえ型落ちの中古品でも私が引き取ってあげる」
「それは心強いな。そんなことになったら頼むよ。到着時刻を連絡してくれよ、ホームで待っているから」

名古屋駅9時25分、定刻に到着した上りひかり号から14番線に降り立った男は周囲を確かめて階段に向かう。
下り16番線ホームに立つと直ぐに、のぞみ号の到着を知らせるアナウンスがある。

「待っていたよ」
のぞみ号から降りてきた女からバッグを受け取ると胸に抱きよせて髪に顔を埋め、スゥッ~と息を吸い込む。
東京や横浜から名古屋出張で降りた人たちを気にする風もなく顔を見合わせてニコッと微笑む。
「あのね、謝らなきゃいけない事があるの、怒る??」
「怒るわけがないよ、どうした??」
「行きたい所があるって言ったでしょう??」
「うん、そう聞いたよ。アユの希望通りにするよ。アユの笑顔が好きだからな」
「私の希望通りでいいんだね、何があっても怒らないって約束したよ……行きたかったところは月曜が休み、今日は行けないの」
「そうか、残念だね。念のために聞くけど、いつ分かったの??」
「ずっと前から知っていたよ。いつか行きたいなって調べていたから」
「クククッ、可愛いな。次の案を聞こうか……その前にどこかに座ろうか」
「名古屋に来たら、コメダ珈琲でしょう……調べてあるから私についてきて」

改札口を出たアユは方向を確かめ、スマホを見ながら地下街に向かう。
「アユ、名古屋は地下街が発達しているけど気をつけないと迷子になっちゃうよ」
「えっ、迷子になった経験があるの??」
「息子が小学生の頃、名古屋城を見ようってことで一泊。名古屋キャッスルホテルまで地下街を歩こうとしたんだけど迷ったんで地上へ、タクシーに乗ろうとしたら、あれがそうですよって指さされたことがある」
「私は方向音痴じゃない……あった、ここだよ」

カフェオレを飲んでモーニングサービスのトーストとゆで卵を食べ終わると、顔を近付けて周囲に聞こえないように小声で話し始める。
「今日は暑いでしょう。それに、ノリタケの森は休みだしホテルでゆっくりしない??」
「休みでザンネンだったね……アユに聞くけど、名古屋まで来た目的は??」
「聞きたい??……私の部屋にいるとき、お尻やオッパイを触るけど脱がせようとしないでしょう。場所が変わればその気になるかなって……怒る??」
「そうか、欲求不満の熟れた身体を持て余しているのか、それは申し訳ない事をしたね。型落ちの中古品でも引き取ってくれる積りがあるんだから大切にしなきゃ」
「クククッ、そうだよ。役立たずの中古品は引き取らない……ホテルのディユース、このホテルは11時から入れるの、すごいでしょう」
スマホで場所を示して予約もしてあるよと囁く表情は妖しく輝く。

1㎞程の距離を30分近くかけてホテルに向かうと時計はちょうど11時を指している。
チェックインを済ませて部屋に入ると十分な広さと景観にアユは感嘆の声を漏らし、男はアユを抱き寄せて壁に押し付け瞳を覗き込む。
「素晴らしい部屋を予約してくれたね、ありがとう」
「ウフフッ、昂奮するでしょう……ごほうびは??」
両手を握って万歳の恰好で壁に押し付け、チュッと額に唇を合わせると口を尖らせて、違う、そこじゃないと抗議する。
壁に押し付けたまま、チュッチュッと唇を啄み瞳を覗き込むと妖しい輝きを発する。
「見つめられたら恥ずかしい……知ってる??深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいている……」
「エッチな気分のアユを見つめると、オレもまたエッチな気分になる……そんな意味かな??」
「クククッ、合格点をあげる……ルームサービスもセットの予約なんだけど、昼食、バスタイム、1回目のエッチ、どれにする??」
「バスタイム、ルームサービス、エッチ1回の順でどうだ??」
「構わないけど、1回だけなの??」
「濃厚なのを1回とお手軽に2回、どっちがいい??」
「お風呂の準備をしながら考えてみる」

するりと抜け出たアユはバスルームのドアを開け、すぐにシャワーの音がする・
「濃厚なのをお願い……しばらく抱いてもらってないから、身体が火照って熱い」


偽者 ~PRETENDER~ -31

佐緒里と内藤 -3

「好い女の条件が謎と男の鼻面を引きずり回す悪女でもある事って、私は当てはまらないわよね。あなたに自由に操られる哀れな女だから……どうなの??」
「クククッ、悪女って言葉は佐緒里のためにあるんだろ。オレを誘導して被虐心を満足させる、巧妙な罠に嵌っちまったのがオレだよ。そうだろう??」
「ウフフッ、あなたが好き。初めて見たときに私好みの匂いがした、だから美香ちゃんに付けたの……盗みセックスって燃えるでしょう??美香ちゃんを大切にしてあげてね」
人目を避けるために隅の方にいるとは言っても人通りの多いコンコース、通り過ぎる人たちが二人に好奇の視線を向ける。
背を向ける内藤には見えないものの、壁に押し付けられる佐緒里はそんな視線を堪えられず、おねがい、場所を変えようと囁く。

駐車場に戻って車に近付くや否や佐緒里は内藤にむしゃぶりつき、キスをねだり舌を絡ませる。
「ハァハァッ……あなたは想像通りの男。リモコンローターのせいだけじゃなくアソコはヌレヌレのグショグショ。私の勘は狂っていなかった」
「フフフッ、乗りなよ。一か所買い物をするよ」

途中でペットショップに立ち寄り、佐緒里の容姿や振る舞いに羨ましそうな視線を向ける女性に声をかける。
「ワンコ用の首輪とリードが欲しいのですが、どんなモノがありますか??」
「犬種と性別をお聞かせ願えますか」
「大型犬の女の子。ネックサイズはこの人と同じくらいです」
内藤は佐緒里の首に広げた両手指を回してニコッと微笑み、佐緒里は犬用首輪をつけられることを想像して動悸が激しくなる。
「分かりました。こちらへどうぞ、色々と取り揃えていますよ」

「すごいな、こんなにあるんだ……デザインと機能、サオリはどっちを求めるかなぁ??」
「えっ、えぇ、どうなんだろう??」
サオリが自分の事だと思った佐緒里は応えることもできずに言葉を濁す。
「店員さんはどう思いますか??ワンコはサオリって名前なんですけど、こんなに種類があると迷っちゃいます」
「そうですね、機能で考えれば、首輪は飼い主さんの意思が伝わりやすいので躾に向いていますが、散歩で引っ張り癖のあるワンちゃんは首が締まります。ハーネスは引っ張っても首にかかる負担は軽減されますが、それが躾に向かない理由になります。十分に躾が出来ているワンちゃんには散歩用としてハーネスが好いと思います」
「躾はまだまだこれからだから首輪の方が好いか……シンプルなデザインだけどこの赤い首輪とこれに合うリードを頂きます。サイズを試しても好いですか」
「どうぞお試しください。目立たないですがダブルスティッチでデザインも洒落ていますし、何より丈夫です」

カチッ……ヒッ……首輪のサイドリリースバックルが音を立てて嵌ると佐緒里はヒッと声を漏らし、明らかに身体が硬直する。
「どう??サオリと同じネックサイズだったけど苦しくない??」
「だいじょうぶだけど、犬用首輪って着けたことがないから何か恥ずかしい」
「ハハハッ、変な事を言うなよ。店員さんが勘違いするよ、何かのプレイ用かと思われちゃうよ」
「えっ、そんな事……そんな人もいるでしょうね。リードですが、これはどうでしょうか??組紐の華やかなデザインが人気ですよ」

首輪とリードを買って車に戻る途中で内藤は思いだしたようにリモコンを取り出して佐緒里に見せつける。
「やめて、ここじゃ許して。こんなにたくさんの人がいるんだよ、家族連れも多くて小さな子供もいるのに……」
ヴィ~ンヴィ~ン……ローターが振動を始めると佐緒里はショーツを穿いているとはいえ落とさないようにと気遣うせいで内股になり、歩幅も狭くてすれ違う人は異常を感じ取って不審げな視線を向ける。
「アウッ、ウグッ、いや、こんなところで」
蹲りそうになる佐緒里を抱えて通りの端に誘導した内藤は、
「昂奮するだろう??オッパイの先端が勃起してシャツを突き上げるのがエロイよ」
「えっ、嘘。そんな恥ずかしい事を言わないで」
胸を抱えるようにしてさりげなく胸に手をやると、ブラウス越しに乳首が尖っている感触が伝わってくる。
「分かるだろう??すれ違う男たちは佐緒里のエロっぽさに驚いた表情をしていたよ」
「ねぇ、早く、早くあなたの家に行きたい。どんなことでも命令に従います。犬になれと言えば犬になるし、素っ裸になれと言われればなります……ここで、これ以上は許して、おねがい」

今の店でナンバー入りして以来、佐緒里に指示する人もいなくなり思いのまま過ごすことが当たり前になっていた。
自由を束縛する者がいなくなるにつれて肉体と気持ちのバランスに違和感を覚え始め、両者の奥底に眠っていた被虐心がムクムクと成長を始めて悶々としていた。
強いオスに征服される妄想を膨らませながらも願いを叶えてくれる匂いを感じさせる男性に巡り合うこともなかったが、初めて店に来た内藤についた時、子宮が切なく疼くような感覚にとらわれた。
先輩の権利として内藤を自分の客にすることもできたが、早々に跪く気にもならず美香の指名客とした。
美香の目を盗んでセックスに耽る悦びは何物にも代えがたいスリルがあり、その背徳感が快感を昂らせる。
美香の内藤に対する恋心を邪魔する気はなく、美香を気にして不自由さを感じながら被虐心を満足させてくれる逢瀬はこの上もない悦びを得ることが出来る。

「分かった、帰ろう。条件がある、ブラウスのボタンを一つ外しなさい……躊躇することはない。一つ外しても見えないよ、分かるだろう??佐緒里にスリルをプレゼントしたいだけだよ」
「一つだけだよ」
声が震え、ボタンに伸ばした指が震えるものの、震える元が街中でボタンを外す不安や恐怖なのか、それとも新たな快感を期待してのモノなのか佐緒里にも分からない。
ヴィ~ンヴィ~ン……ウッ、周囲の人たちの目を考えることもなく股間を押さえて立ち止まると視線に犯されるような気がしてドロッと花蜜が溢れ出る。
「どうした??」
「だめ、アソコがドロドロになって愛液が太腿に垂れてきた。気付かれちゃう」
「クククッ、急ごう」
佐緒里の手を取りきつく握りしめて駐車場に急ぐ。
痛く感じるほど固く結ばれた手で引っ張られる佐緒里は、外気に晒された胸の谷間が感じる心地良さに心を躍らせて後に続く。

バタンッ……フゥッ~、アハハッ、ウフフッ……車のドアが閉まって二人だけの空間に身を置くとこみ上げる可笑しさに堪えきれなくなる。

偽者 ~PRETENDER~ -30

佐緒里と内藤 -2

ノーブラの上半身はブラウスが守り、ローターを挿入したままショーツを穿いてラップスカートを整え終えたタイミングで駅近くの駐車場に入る。
「何が好い??」
「セックスのエネルギー補給と美容を兼ねて豚肉……トンカツにしようかな」

駅南口で4階まで直通のエスカレーターに乗り、そこから乗り継いで7階にある京都が本店の店に入る。
本店のある京都は勿論、伊丹空港や大阪、神戸のほか関東にも何店舗かある。
上海にも出店しているらしいので、現地に行く機会があれば日本食好きの友人を誘って行ってみようと思っている。
12時をわずかに過ぎた時刻の店内は満席のようにも見えたが入り口から見えない場所に空席があり、二人は待つことなく案内された。
ヒレカツ定食を佐緒里は120g、内藤は160g、別に160gのロースカツをオーダーする。
お代わりしたキャベツと、お櫃で用意してくれる麦ごはんを一粒残さず食べた二人は顔を見合わせて満足の笑みを浮かべる。
「さっくり揚がって美味しかったけど、食欲が性欲を駆逐しちゃった」
「そうか……時間がたっぷりあるのに、それは困るな」

ポケットから取り出したリモコンをテーブルに置くと周囲を見回した佐緒里は、
「本当に嫌な男、私を苛めて楽しい??」
顔が上気して声が震え、見開いた瞳はリモコンに吸い寄せられるように見つめて両手で股間を押さえる。
「佐緒里、そんな不自然な恰好をすると気付かれるよ……それじゃ、期待に応えなきゃいけないな」
大人のオモチャ然とした色や形ではなく、一見してスイッチらしいものもないリモコンはさりげなくテーブルに置いても違和感がなく自然な風で存在する。
手を伸ばせば届くはずのリモコンを見つめるばかりで掴もうとせず、内藤に向ける視線は妖しく揺れて被虐心を募らせる。
内藤の手が伸びてリモコンのスイッチを入れると佐緒里の眉間に皴が刻まれて唇を噛み、テーブルに隠れて見えない場所でスカート越しに股間を押さえて太腿を擦り合わせる。
ウックゥッ~……上目遣いに見つめる佐緒里の視線に媚びが浮かび、嫌がっているように感じられないどころか他の客や店員を気にして快感を滾らせる。
「佐緒里、感想は……オレは意地悪で嫌な男だからね」
「声が大きいよ……ヒッ、すごい」
テーブルに置いたままのリモコンを操り、バイブレーションを変化させて佐緒里の反応を楽しむ内藤に通りかかった店員が声をかける。

「お連れ様はお身体の調子が悪いのですか??上気して熱があるように見えますが??」
「夏風邪気味なんだけど、このお店のトンカツを食べれば元気になるだろうってことで来たんだけど、ご心配をおかけしちゃって申し訳ないです……佐緒里、帰ろうか??」
「はい……ごめんなさいね、美味しいトンカツを食べて元気を取り戻せます。ウッ、アンッ……大丈夫です、ごめんなさい」
内藤の手の中でリモコンが意地悪く作動して振動を強め、ブルッと身体を震わせた佐緒里は真っ赤な顔で唇を噛みテーブルに手をついて崩れ落ちそうになる身体を支える。
「大丈夫かい??……申し訳ないけど、これでお会計をお願いします」
明細書と紙幣を受け取った店員がレジに向かうと、佐緒里の腰に手を添えて後を追うように歩き始める。

「ありがとうございました。お大事になさってください」
「ありがとう。美味しかったです」
7階から下への移動でエレベーターに乗ると内藤は佐緒里の頬を両手で挟んで唇を合わせる。
ヌチャヌチャッ……ハァハァッ……性的興奮や羞恥心、背徳感で自分を抑えきれない佐緒里は内藤にしがみついて唇を貪り、荒い息を漏らす。
「どうして??私はどうしちゃったのかなぁ……昂奮しているのか怖いのか分からない。まるで自分じゃないみたい」
チンッ……手をつないで乗り込んできたカップルは妖しい空気を感じたのか、手を離すことなく二人に背を向けてドアに向かって並んで立つ。

ヴィ~ンヴィ~ン……ウッウグッ……「佐緒里、大丈夫??もうすぐ着くからね」
予期せぬタイミングで始まったバイブの振動を堪えられるはずもなく、明らかに妖しい声を漏らして両手で股間を押さえる。
振り向いたカップルは心配そうなそうな表情で顔を歪める佐緒里を見つめ、
{大丈夫ですか??}
「ご心配をおかけして申し訳ない。スッポンポンで寝たせいで身体が冷えちゃったようなんです」
「アハハッ、夜も暑いですもんね」
チンッ……「心配していただいてありがとう」、「お大事に……」
改札口につながるフロアーに出た佐緒里は唇を噛んでバイブの悪戯を堪え、平静を装うものの自然と前かがみになり、内腿にまで花蜜が溢れるのを意識してショーツに守られているバイブの落下を防ごうとして内またになってしまう。

ムギュ……ウグッ、ヒィッ~……前触れもなくコンコースの壁に押し付けられてブラウス越しにブラジャーを外した胸の膨らみを掴まれると、自然と悦びの声を漏らしてしがみつく。
「離婚後は理想のセックスを求めて妄想を膨らませていたけど、あなたに会えてよかった」
「クククッ、それも盗み食いのスリルが溜まんないんだろう??悪い女だ」
「そうなの、妹分の美香ちゃんと付き合っているあなただから昂奮する。私は悪い女」
「好い女の条件は見た目や雰囲気だけじゃなく謎と男の鼻面を引きずり回す悪女でもある事。佐緒里は好い女だよ」

偽者 ~PRETENDER~ -29

佐緒里と内藤 -1

駅からも佐緒里の部屋からも離れた場所の小さな喫茶店で内藤はホットコーヒーを飲みながら店内のあちこちに視線を巡らす。
コッチコッチ……大きな柱時計が刻む時間は店の外よりもゆっくり進んでいるかのような錯覚を覚える。
柱時計だけではなく、この街の変化を気に留めることもなく店内はアンティーク家具に飾られてアイデンティティーを主張する。
あえて店主と呼びたくなる女性は清楚な雰囲気を醸し、容姿だけではなく動作も優雅で無駄がなく視線を逸らす事を許されないような雰囲気がある。

カランカラン……店内の静寂を破るドアベルの音で振り向くと、ネイビーブルーのラップスカートに合わせた白いブラウスを腕まくりした佐緒里が微笑んでいる。
「ダメよ、ママが好い女って事は同性の私も認めるけど、口説くのは私のいないときにしてね」
「あらっ、佐緒里のお相手なの??どうしたら口説いてもらえるかなって思案していたのに……」
「残念でした、諦めてね。アイスコーヒーをお願い」
「はいはい、諦めます。別れるときは教えてね……」

顔を近付けた二人はママに聞かれないように小声で話す。
「美香ちゃんは気付いてない??」
「大丈夫だよ。今んところオレの事を信じてくれている……と、思う」
「今週は店に一回でしょう??外では??」
「外では会ってないよ。あんなことの後じゃ少し冷静になる時間が必要だろう」
「店で一回か、信じているかどうか……ここで長話は、場所を変えない??」
「アソコが疼くかい??」
「えっ、嫌な男。こんな男に惚れた美香ちゃんが可哀そう……ウフフッ」
「行きたい処がある??」
「任せる。お店が休みの今日は泊りの用意をしてきたから、内藤さんの家でもいいよ……一緒に住んでいる人がいなければね」
……佐緒里の表情を凝視した内藤はトートバッグを受け取り、行こうかと声をかける。

「ありがとうございました。次は佐緒里抜きで来てくださいね」
涼やかな声に後ろ髪を引かれる思いの内藤は、ごちそうさま、近いうちにと声をかけて店を出る。

佐緒里を乗せた車は郊外に出て線路と並行する道を走る。
「あの人こそアリ地獄の主であり、香水はウツボカズラのエッセンス。甘い罠で引き寄せた男から養分を吸い取っちゃうの……気をつけてね」
「そんな風に言われるとは思わなかったよ」
「美香ちゃんには気付かれないようにね……家に連れてってくれるの??」
「あぁ、佐緒里さんを一晩監禁するためにね」
「先日は佐緒里って呼んでくれたのに……今日も意地悪く支配してくれるんでしょう??」
「佐緒里のMっ気を理解してくれる人がいなくて欲求不満気味のようだね。パンツを脱いじゃいなよ」
挨拶でもするように昂奮することもなく淡々と話す内藤に気圧された佐緒里は異を唱えることもなくスカートの中に手を入れる。
「もしも嫌だって言ったらどうするの??」
「佐緒里は性的好奇心から逃れることが出来ない……そうだろう??ラップスカートとブラウスを選んだのも意味があるんだろう??」

下着を下ろして足から引き抜き、無くさないように持っていてくれると右手を差し出して嫣然と微笑み、真っ赤な下着を受け取った内藤は顔に押し付けて、フゥッ~と息を吸い込む。
「そんな趣味があるなら言ってくれればよかったのに……昨日から穿き替えないでいたのに、ウフフッ」

満足気に微笑んだ内藤は後部座席を指さす。
紙袋を覗き込んだ佐緒里はリモコンローターを取りだし、スケベと呟いてラップスカートを開いて躊躇することなく股間を晒す。
指先にまぶした唾液を股間に塗り付けて、アウッウゥッ~と艶めかしい声を漏らして内藤の視線を気にすることなく独りエッチを始め、ローターを口に含む。
ピチャピチャ、走る車の中で股間を晒してオナニーに耽る背徳感で股間は早くも卑猥な音を奏で、唾液まみれのローターをバギナに擦りつけると力を込める必要もなく、ズズズッと姿を隠す。
「自分で試しなさい」
ヴィ~ンヴィ~ン……佐緒里の手の中でリモコンは操作され、くぐもった振動音は内藤には静かに聞こえて人込みでも使えるなと思い、佐緒里は振動と共に発する音が羞恥心を苛み股間を濡らす。
「ブラウスを脱いでブラジャーを外しなさい。佐緒里のM性は肉体的苦痛を好まないけど、精神的に追い込まれる羞恥心に反応するんだろう??」
「両親に納得してもらうために偽者役を頼んだけど、あなたの性的嗜虐性は私にとって本物、こんな男に抱かれたいと思っていた理想に近い」

ブラウスを脱いで白い肌を晒した佐緒里は車の左右に視線を走らせて素早くブラジャーを外し、舐めて湿らせた指先で膨らみの先端を擦り、気持ちいいと呟く。
線路に沿って続いていた道路は家々の間を走り始め、佐緒里はブラウスをつけてラップスカートに手を添えて内藤の横顔を見る。
「昼食を食べて行こう。ローラーは挿入しとくんだよ……これでよければ穿いても好いよ」
脱いだばかりのショーツを佐緒里に手渡し、食事中にローターをポロじゃ格好悪いからなと囁く。
プロフィール

ちっち

Author:ちっち
オサシンのワンコは可愛い娘です

アッチイのは嫌
さむいのも嫌
雨ふりはもっと嫌・・・ワガママワンコです

夜は同じベッドで一緒に眠る娘です

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード