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堕ちる

幸子の悲劇-22

温めのお湯を張ったバスタブに頭の先までドボンッと浸かり、顔に掛かる髪を掻き揚げてバスタブの縁に腕を置くとお湯が滴り落ちて残りは水の玉になって滑り落ちる。
30代半ばになっても肌理の細かい肌は大理石と見紛うばかりで乳白色に輝いて張りがあり、友人たちに上手に年を重ねているねと羨ましがられている。
これまでは他人に褒めてもらおうなどという意識を持たず、美しさを保つことが日々の励みになり生きる目的の一つにもなっていた。
そんな努力が魅力的な身体となり、今まさに高い商品価値となって妖子たちに期待されているのだと思う。
妖子が言った、返済が終わった後に期待していることって何だろう??
新たな不安が育ち始める。
将来を悶々と考えるよりも調教を受けている最中の方が余計な事を考える余裕がなくて気が休まる。
何も考えることなく調教を堪える自分が愛おしい。
自ら過去の貞淑な妻に別れを告げて放埓な女を演じるのは愛想尽かしした夫と決別するためであり、不信感を抱いた夫にいささかの未練もない。

化粧で念入りに飾り、衣装を整えて妖子たちを待つ時間は自分も驚くほど心穏やかで不安を感じることがない。

「休憩は終わり。始めるわよ」
妖子は従えてきた男三人に合図を送り、彼らはテーブルに縄やバイブ、ローソクを並べて天井から下がる鎖などの確認をする。
視線の端でその様子を見ても動じる様子もない幸子の髪を撫で、頬を擦りながら妖子は話し始める。
「いわゆるSM行為は知的な遊び。ある種の動物のセックス時の行為をSMになぞらえる報告例もあるけど、それが所謂SMかどうかは分からない。さすがに縛りをする動物はいないだろうし、本来SMは相互理解を前提にした愛の交歓でSはサービス、Mは満足やわがままのMと言われる・・・SとM相互の関係の他にショーとしてのSMは見る人を満足させなきゃいけない。分かるでしょう??Mの幸子がSである男たちをリードして幸子自身が満足し、見る人も満足させる・・・今日はムリでも縛りに慣れた幸子ならできる」

妖子の言う、縛りに慣れた幸子とは何度縛られると達する境地だろうと不安が芽生え、平静を保っていた幸子の気持ちが騒めき始める。
最初から本格的に始めて身体が拒否すると困るから、今日は入り口を経験するだけにしようねと言われて安堵する。

「両手を揃えて出しなさい」
身体の前に突き出した両手首を男の一人が縛る。
縛り終えたかと思ったところで手首を巻く縄を絞るように両手の間に縄を通されて顔を顰めると、痛いかと聞かれる。
「ハァハァッ、痛くはないけど隙間もないほど縛られて手首が動かない」
「それでいいの。緩いと手首がぐずぐず動いて肌が傷ついたり、変なところが締まって血行が悪くなったりして事故につながることがある。縛りで中途半端は危険なんだよ、きっちり固定した方が安全なの・・・美しさって言うかエロさも、きっちりの方がいいって徐々に分かるよ」
妖子の説明を聞く幸子は手首を縛られただけで、ハァハァッと息を荒げて無言で頷くしかない。

妖子と三人の男が取り囲み、八つの瞳に見つめられる幸子は息を荒げるだけではなく、身体の芯から沸き上がる気持ち良さに立っているのさえ辛くなる。
その後も衣服を付けたまま足を縛られたり、胸の膨らみを強調するように縄をかけられたりと男の操る縄が手の延長なのではないかと思うほど自在に操る術を見せられた。
乳房の上下を這う縄が食い込む痛痒さに酔い、きっちり縛った方がいいと言ったのはこのことだと思うほど縄の感触が気持ちいぃ。
ブラジャーを着けていない乳房が縄に絞り出され、突き出た先端が衣服に擦れる痛いほどに勃起する。
女の部分がキュンとしてジュンと蜜が滲み出るのを感じる。
アンッ、ハァッ~・・・洩れる吐息を我慢することも出来ず、縛られるだけで善がる自分を恥ずかしく思って目の縁を朱に染める。
「ウフフッ、気持ちいいの??可愛いわよ・・・どんな気持ち??」
「縄に支配されるような気持ちになるのが切なくてゾクゾクする。可哀そうな自分を愛おしく思っちゃう」
「可愛いわよ、幸子は私の思った通りの女性。夢占いで縄に縛られるのは異性に愛されたい願望の象徴とか、規則に縛られて精神的、肉体的に自由を束縛されている状態を表しているらしいよ。縄で縛られることで気持ちの開放を感じるようなら意識して自分のルールから、はみ出してみるのがいいのかも」
妖子の言葉は思い当たることがある。夫の作った借金を返済した後は、離婚届を叩きつけて何ものにも束縛されることなく自由に生きてみようと改めて思う。

上半身を這う縄から解放された後は、椅子の肘掛けを利用して両手両足をM字開脚に縛られ、残る男二人に情け容赦なく衣服を引きちぎられて下着姿にされる。
「ヒィッ~・・・怖い。痛い事はしないで、お願い」
「この人たちに幸子を苛めたりさせない、私が約束する。幸子が自分の気持ちを正直に表せるように手伝うだけだよ。安心しなさい」
男三人がゆっくりと幸子を追い詰めて妖子がそれを守る立場に立ち、幸子の気持ちを揺さぶりながら心の内に眠る卑猥な気持ちに気付かせようとする。
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ちっち

Author:ちっち
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