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彩―隠し事 6

秘密 

会員制クラブで被虐の悦びに目覚めた優子はショーの終了後、
「彩さん、どうされますか??席に戻ってお酒やショーを楽しみますか??あるいは、、このままお帰りになって余韻に浸るのも結構な事だと思います」
「このまま帰ります。気持ちの整理をしないと明日の仕事に影響しちゃいそうなので・・・おいくらですか、ここで精算させてください」
「いえ、今日は私どもから彩さんにお支払いいたします。彩さんのショーに感動されたお客様から複数のチップが届いています・・・この中に入っています」

そのまま通用口から外に出て最寄りの駅まで送ってもらい、電車の中で封筒を確かめると予想を超える金額が入っていた。
帰宅後すぐにバスタブに湯を張り身体を沈めると乳房の上下にはっきりと分かる縄の痕が残り、手首にもよく見るとそれと分かる痕がある。
元々、バスタイムが好きな優子が時間をかけて血行を促すと手首のそれは気にならない程度に薄くなり気持ちが軽くなる。
乳房に残る縄模様は、恥ずかしい姿を見知らぬ人に見られたいという思いを成就し、優子自身が気付かぬうちに温めていた、縛られたいという思い、自由を奪われる中で感じる心の開放に酔った証として愛おしくさえ思える。

ベッドに横たわって眠ろうとすればするほど目が冴える。
明日は重要な仕事はなかったはず。それが気を楽にしてくれる。
こんな時にも仕事を気にする生真面目さが我ながら可笑しくて苦笑いが浮かぶ。
胸に手を伸ばすと指先が縄の痕を感じると同時にクラブで彩を見つめていた男の顔が蘇る。
ショーツ一枚だけを身につけて縄で拘束される身体を見ることなく、彩の視線に絡みついたまま心の中を犯されるような思いが沸き上がり、組み敷かれて慰み者にされる妄想が沸々と育っていた。
どこの誰とも分からない相手では二度と会うことはないだろう。いや、クラブに行けば会えるかもしれない。
そんな事を考えると手は自然と股間に伸びて蠢き、早々に出来た泥濘がクチュクチュと卑猥な音を立てる。
クラブでは長い間、心の奥に秘めていた隠し事をあからさまにされたものの、身体は生殺しのような状態でモヤモヤしていたが指が与えてくれる快感でスッキリ眠ることが出来た。

夢の中でカヲルが囁く。もう一度縛られると心だけでなく、身体も快感で震えて満足できるようになるわよ。
名前も住まいも知らない、あの男も囁く。彩の心の奥には自分でも気付いていないアヤカシが棲みついている。アヤカシは彩を官能の世界に引きずり込む魔性のケモノ。


「優子、どうしたの??一仕事終わるたびにため息をついて優子らしくないよ」
「えっ、ごめん。いつもと同じ積りだけど、違って見える??」
睡眠不足気味なのは気にならないものの、身体の芯に残るモヤモヤした思いが仲の好い同僚には奇異に映るらしい。
あなたの教えてくれた秘密クラブで縛られてきたんだよ、と告げるとどんな反応をするだろうと思うものの問いかけには笑みで誤魔化すしかない。

「久しぶりに飲みに行こうか、優子なら浮気相手なんてすぐに見つかるよ。協力しようか??」
「結構よ、浮気相手は自分で見つけられるもん」
「やっぱり、今日の優子は変。自分から浮気をするって宣言するなんて何があったの??旦那とは付かず離れずのままでしょう??」
居酒屋では浮気願望を追求されることなく、一言、優子があんな事を言うからびっくりしちゃった、の後はいつもの通り他愛のない話で盛り上がった。

仲の良い友人と美味い酒と食事を楽しんだ翌日から妄想を振り払い、仕事と趣味に集中したものの二度目の週末を迎えようという金曜日、自分の気持ちを持て余すほどイライラが高じるのを意識する。
跡形もなく消え去った縄模様を思い出して指を這わせると縄が身体に食い込む感触が蘇り、縄に抱かれる心地良さを思い出した身体が疼く。
今日、再び秘密クラブを訪れると縛られるか否かにかかわらず、SM行為から抜け出せなくなるような予感がする。
縛られたい、恥ずかしい姿を見知らぬ人に見られたい。
身体の芯から沸き上がる疼きをどう処理しようかと真剣に悩む。

夫は金曜の今日から日曜まで接待ゴルフで留守にすると言い置いて出勤した。浮気相手と遊びに行くのが接待なのと言いたくなるのを飲み込んで、じゃぁ、久しぶりに実家に行ってこようかなと言うと、よろしく言っといてと安心したようだった。

仕事の場では女性であることを意識しないようにパンツスーツで通してきたが、今日はスカートスーツを引っ張り出して身につける。
グレーのスーツに黒いトップスを合わせて清潔感を失うことなく、女性らしいエレガントさの中に遊び心を付け加える。
スカートの中はガーターベルトで留めたストッキングだけでショーツを穿いていない。
ひざ丈のタイトスカートはただならぬ緊張感を伴い、ハイヒールが包む踵から頭の先端まで姿勢を意識する。
出勤途中で前を歩くスカート姿の女性を見て、この人の穿く下着なんて見えるはずがないと思うと自分のノーパン姿も自ら宣言しないと分かるはずがないと気が楽になり、羞恥心と共に育つスリルが萎んで少しがっかりする。

同僚たちは異口同音に、どうしたの、女を前面に出して。週末を利用してご主人とどこかへ遊びに行くんでしょうと言う。
ご想像にお任せしますと答えたものの、終業後、どうしようかと思って仕事が手につかない。
仲のいい友人は、「まさか本気で浮気するんじゃないよね。優子は真面目に考える質だから止めた方がいいよ」と真剣に心配してくれる。
ガーターベルトで留めたストッキングだけで下着は穿いてないんだよと言ったら、どんな顔をするだろう。
エッチな秘密を持つことがこんなに昂奮するなんて、身体が熱い。

急な仕事が入って残業を終えた時には課長と二人きりになっていた。
「いつも申し訳ないね。私が課長の職を全うできるのは鍬田君のお陰だよ」と嬉しい言葉をかけてくれる。
「片付けなきゃいけない事が残っているし、ご主人に申し訳ないから誘うのは止めとくよ」
紳士然とした言葉を物足りなく思いながら、下着を穿いていないから課長がその気ならここでエッチ出来ますよと言いたくなるのを我慢して、
「都合の良い時にお昼をごちそうしてください」と声をかけると、こぼれんばかりの笑みを浮かべて、「いい店を知っているから近いうちに誘うよ。その時は鍬田君の友人も一緒にね」と誤解を招かないように気遣ってくれる。

退出して時計を見るとすでに21時を過ぎ、隙間風が吹いているとはいえ夫がいない家への帰宅を焦る事もないので近くの店で夕食を済ませると22時。
通勤で利用する電車に乗り込む。

意識しないまま引き寄せられるように秘密クラブのある駅で下車してしまった優子は、今更ながら駅頭に立ってどうしようかと悩む。
クラブへの道は戻り道のない一方通行のように思えて足がすくむ。
下着を穿いていないひざ丈のタイトスカートにも慣れて、身体だけではなく気持ちも大胆になっている優子は、夫は今頃、不倫相手と楽しんでいるのだろうと思うと帰路に就くのも癪で駅前のホテルにあるバーに行くことにする。

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ちっち

Author:ちっち
オサシンのワンコは可愛い娘です

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さむいのも嫌
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夜は同じベッドで一緒に眠る娘です

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