彩―隠し事 434
変転-12
「座った方が良いよ。事情は知らないけど逃げ出すタイミングを失ったようね……ねぇ、鍬田さん。タケを通じての仕事だし、初対面だけど私たちって何か縁があると思わない??」
「思います。健志が荒垣さんに連絡してくれるのをそばで見ていて、ほんの少し嫉妬しました。ごめんなさい」
「電話連絡で妬いてくれたの??念のために聞くんだけど、鍬田さんは不倫ってどう思う??」
「えっ、突然の難しい質問ですね……正直に答えます。私は結婚しています、そして夫を愛しています……フゥッ~、浮気は夫にも健志にも失礼。健志と過ごす時間は浮ついた気持ではなく本気。夫といる時は本気で夫を愛しています」
「いいね、それ。世間の多くの人が支持するかどうかわからないけど私は好いと思う……私はそんな考えがなかったからタケと別れたけど、正直、鍬田さんが羨ましい……さて、仕事をしましょうか??」
「オレは離れていてもいいだろう??終わったら食事しようよ、時間はあるだろう??」
健志の問いかけに荒垣は、
「鍬田さんがイヤじゃなければ私は好いよ。こんな言い方をすると嫌だって言えないね……」
「ウフフッ、喜んで、荒垣さんさえよろしければ長いお付き合いをお願いしたいと思います」
「クククッ、タケを挟んで私たちは姉妹……好い女二人が姉妹の契りを交わすのはタケが切っ掛け、嬉しい??」
「うるせえよ。彩、仕事が終わったら連絡してくれよ。待っている」
健志の後ろ姿が見えなくなると二人は顔を見合わせて笑みを浮かべる。
「タケが彩って呼ぶ理由。なんとなく想像できるけど、いつか教えてね」
「いつかね……早速ですが、わが社が始める新規プロジェクトのリーダーとしてお話をさせていただきます」
用意した資料に沿って簡潔に説明を受けた荒垣は幾つかの質問で概略を理解し、ニコッと微笑む。
「分かりました。素材メーカーである御社が川下に進出する意図も理解できました。用意していただいた資料は私以外の者が見ることはないと約束します。紹介はテレビと紙媒体、両方を予定していますが具体的に案が固まれば改めて連絡させていただきます。鍬田さんが付け加えることがありますか……それでは、よろしくお願いいたします」
「こちらこそ、よろしくお願いいたします」
「妹のためだから精一杯、務めさせていただきます……実年齢はともかく、タケとの付き合いは私が先だから姉でいいでしょう??クククッ、心配しているかもしれないから連絡してあげた方が良いよ、お腹もすいたしね」
「健志??…終わったよ……どうすればいいの??……うん、分かった。すぐに行く、待っていてね」
健志が待っている最上階のレストランフロアに向かう二人はエレベーターの中で親しく話す。
「鍬田さんは健志の部屋にいるの??」
「うん、夫が出張中なので健志んちに……夫は浮氣をしているらしいの。そんな夫を今でも愛しているので詰ることも出来ずにウジウジしていた時に健志に会って…今の関係に。健志と付き合うようになって夫の不実を許せるようになったし、精神的に落ち着きを取り戻せた。いつまでも続けられると思っていないけど、今は幸せ」」
「鍬田さんは妬いたって言ったけど、実は私も……結婚願望が強かった私は夫がプロポーズしてくれたのを切っ掛けにタケと別れたけど、今でも時々思い出すの……ごめんね」
「いえ、嬉しいです。私の惚れた人を他の女性も好きでいるって……私の選択は独り善がりじゃなく、こんな素敵な仲間がいるんだもん。ウフフッ」
「彩って、もしかするとタケ用の偽名なの??詳しく知りたいわけじゃないけどね」「おっしゃる通りです。名乗ることになった詳細は省かせていただければ幸いです」
「ごめんなさい。少し気になっただけだから、優子さんの隠し事を詮索しようなどと思っていませんから……それに、女も隠し事を持った方が男性に魅力的に映るかもよ、ウフフッ。そうだ、初対面だけど何か縁を感じるでしょう??もう少し、ざっくばらんな付き合いをしようよ」
「そうだね、お姉さん。クククッ」
「お待たせ……荒垣さんのお陰で仕事の懸念が一つ払拭できそう。紹介してくれてありがとう」
「よせよ、そんなことを言われると照れるじゃねぇか」
「はいはい、じゃれ合うのは私がいなくなってからにしてね…お腹が空いた。何を食べさせてくれるの??」
「荒垣さんが好きだった中華を予約しといた。いいだろう??」
「人妻の私に気を遣わなくてもいいのに。クククッ、優子さん優先でいいんだよ」
「二人に頼みがあるんだけど、オレがいる時は彩で通してくんないかな??」
「私は好いけど条件がある。私のことも昔のように由惟って呼んでくれる??…優じゃなかった、彩さん良いでしょう??」
「もちろん。姉妹の契りを結んだお姉さんの頼みだから私には異存がないよ」
案内された個室で席に着くと言葉を交わす間もなく料理が運ばれる。
「酒は頼んでないけどいいだろう??」
冷菜に始まり野菜とアワビの炒め物やフカヒレの姿煮、車エビのチリソースなどに舌鼓をうちながら女二人は仕事のやりがいや音楽、スポーツなど尽きることのない話題で盛り上がり、そんな二人を見ながら話しを振られることのない安心感に浸る健志はエビチリにむしゃぶりつく。
「タケ、好い女が二人もいるのに食欲優先で無視するって失礼じゃない??彩さんもそう思うでしょう??」
「えっ、うん、でも、久しぶりに会う荒垣さんに対して話の接ぎ穂が見つからないか、私がいるから話しにくいのかなぁ、ごめんね…荒垣さんとは久しぶりなんでしょう??私のことは気にしなくてもいいよ」
困ったような表情の彩は荒垣に対して軽く頭を垂れ、健志に視線を移して優しく微笑む。
「よし、分かった。提案なんだけど、三人でいる時は、由惟と彩、オレはタケであり健志、変な意味じゃなく三人は知らない仲じゃないからな…どうだろう??」
「クククッ、私とタケ、タケと彩、そして彩と私は姉妹。いい意味での三角関係、いい関係を築けそう」
水餃子で腹を満たし、デザートで幸福感を満足させた由惟と彩はスケジュールの確認をして仕事以外での連絡方法を交換して今日の面会に謝辞を述べる。
「由惟さん、今日はありがとうございました。公私とも親しいお付き合いをお願いいたします」
「私こそ彩さんと会えたことでタケとの付き合いが間違いじゃなかったと再確認できて幸せ。二人を見ているとほんの少し妬けるけど、それも想い出が楽しいモノだった証拠。彩さん、これからもよろしくね」
夕食の食材を中心に買い物を済ませた二人は帰路に就く。
「座った方が良いよ。事情は知らないけど逃げ出すタイミングを失ったようね……ねぇ、鍬田さん。タケを通じての仕事だし、初対面だけど私たちって何か縁があると思わない??」
「思います。健志が荒垣さんに連絡してくれるのをそばで見ていて、ほんの少し嫉妬しました。ごめんなさい」
「電話連絡で妬いてくれたの??念のために聞くんだけど、鍬田さんは不倫ってどう思う??」
「えっ、突然の難しい質問ですね……正直に答えます。私は結婚しています、そして夫を愛しています……フゥッ~、浮気は夫にも健志にも失礼。健志と過ごす時間は浮ついた気持ではなく本気。夫といる時は本気で夫を愛しています」
「いいね、それ。世間の多くの人が支持するかどうかわからないけど私は好いと思う……私はそんな考えがなかったからタケと別れたけど、正直、鍬田さんが羨ましい……さて、仕事をしましょうか??」
「オレは離れていてもいいだろう??終わったら食事しようよ、時間はあるだろう??」
健志の問いかけに荒垣は、
「鍬田さんがイヤじゃなければ私は好いよ。こんな言い方をすると嫌だって言えないね……」
「ウフフッ、喜んで、荒垣さんさえよろしければ長いお付き合いをお願いしたいと思います」
「クククッ、タケを挟んで私たちは姉妹……好い女二人が姉妹の契りを交わすのはタケが切っ掛け、嬉しい??」
「うるせえよ。彩、仕事が終わったら連絡してくれよ。待っている」
健志の後ろ姿が見えなくなると二人は顔を見合わせて笑みを浮かべる。
「タケが彩って呼ぶ理由。なんとなく想像できるけど、いつか教えてね」
「いつかね……早速ですが、わが社が始める新規プロジェクトのリーダーとしてお話をさせていただきます」
用意した資料に沿って簡潔に説明を受けた荒垣は幾つかの質問で概略を理解し、ニコッと微笑む。
「分かりました。素材メーカーである御社が川下に進出する意図も理解できました。用意していただいた資料は私以外の者が見ることはないと約束します。紹介はテレビと紙媒体、両方を予定していますが具体的に案が固まれば改めて連絡させていただきます。鍬田さんが付け加えることがありますか……それでは、よろしくお願いいたします」
「こちらこそ、よろしくお願いいたします」
「妹のためだから精一杯、務めさせていただきます……実年齢はともかく、タケとの付き合いは私が先だから姉でいいでしょう??クククッ、心配しているかもしれないから連絡してあげた方が良いよ、お腹もすいたしね」
「健志??…終わったよ……どうすればいいの??……うん、分かった。すぐに行く、待っていてね」
健志が待っている最上階のレストランフロアに向かう二人はエレベーターの中で親しく話す。
「鍬田さんは健志の部屋にいるの??」
「うん、夫が出張中なので健志んちに……夫は浮氣をしているらしいの。そんな夫を今でも愛しているので詰ることも出来ずにウジウジしていた時に健志に会って…今の関係に。健志と付き合うようになって夫の不実を許せるようになったし、精神的に落ち着きを取り戻せた。いつまでも続けられると思っていないけど、今は幸せ」」
「鍬田さんは妬いたって言ったけど、実は私も……結婚願望が強かった私は夫がプロポーズしてくれたのを切っ掛けにタケと別れたけど、今でも時々思い出すの……ごめんね」
「いえ、嬉しいです。私の惚れた人を他の女性も好きでいるって……私の選択は独り善がりじゃなく、こんな素敵な仲間がいるんだもん。ウフフッ」
「彩って、もしかするとタケ用の偽名なの??詳しく知りたいわけじゃないけどね」「おっしゃる通りです。名乗ることになった詳細は省かせていただければ幸いです」
「ごめんなさい。少し気になっただけだから、優子さんの隠し事を詮索しようなどと思っていませんから……それに、女も隠し事を持った方が男性に魅力的に映るかもよ、ウフフッ。そうだ、初対面だけど何か縁を感じるでしょう??もう少し、ざっくばらんな付き合いをしようよ」
「そうだね、お姉さん。クククッ」
「お待たせ……荒垣さんのお陰で仕事の懸念が一つ払拭できそう。紹介してくれてありがとう」
「よせよ、そんなことを言われると照れるじゃねぇか」
「はいはい、じゃれ合うのは私がいなくなってからにしてね…お腹が空いた。何を食べさせてくれるの??」
「荒垣さんが好きだった中華を予約しといた。いいだろう??」
「人妻の私に気を遣わなくてもいいのに。クククッ、優子さん優先でいいんだよ」
「二人に頼みがあるんだけど、オレがいる時は彩で通してくんないかな??」
「私は好いけど条件がある。私のことも昔のように由惟って呼んでくれる??…優じゃなかった、彩さん良いでしょう??」
「もちろん。姉妹の契りを結んだお姉さんの頼みだから私には異存がないよ」
案内された個室で席に着くと言葉を交わす間もなく料理が運ばれる。
「酒は頼んでないけどいいだろう??」
冷菜に始まり野菜とアワビの炒め物やフカヒレの姿煮、車エビのチリソースなどに舌鼓をうちながら女二人は仕事のやりがいや音楽、スポーツなど尽きることのない話題で盛り上がり、そんな二人を見ながら話しを振られることのない安心感に浸る健志はエビチリにむしゃぶりつく。
「タケ、好い女が二人もいるのに食欲優先で無視するって失礼じゃない??彩さんもそう思うでしょう??」
「えっ、うん、でも、久しぶりに会う荒垣さんに対して話の接ぎ穂が見つからないか、私がいるから話しにくいのかなぁ、ごめんね…荒垣さんとは久しぶりなんでしょう??私のことは気にしなくてもいいよ」
困ったような表情の彩は荒垣に対して軽く頭を垂れ、健志に視線を移して優しく微笑む。
「よし、分かった。提案なんだけど、三人でいる時は、由惟と彩、オレはタケであり健志、変な意味じゃなく三人は知らない仲じゃないからな…どうだろう??」
「クククッ、私とタケ、タケと彩、そして彩と私は姉妹。いい意味での三角関係、いい関係を築けそう」
水餃子で腹を満たし、デザートで幸福感を満足させた由惟と彩はスケジュールの確認をして仕事以外での連絡方法を交換して今日の面会に謝辞を述べる。
「由惟さん、今日はありがとうございました。公私とも親しいお付き合いをお願いいたします」
「私こそ彩さんと会えたことでタケとの付き合いが間違いじゃなかったと再確認できて幸せ。二人を見ているとほんの少し妬けるけど、それも想い出が楽しいモノだった証拠。彩さん、これからもよろしくね」
夕食の食材を中心に買い物を済ませた二人は帰路に就く。