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営業―3

車が明石海峡大橋を渡り始めるとシノの表情が一層華やぎ、横顔を盗み見るタケは青い空や海の眩さに負けずに輝くさまに頬が緩む。
「うん??どうしたの??私の顔に何か付いている??」
「えっ、ゴメン。この橋を渡るときは海や空の景色、橋の向こうに広がる淡路島に心が躍るんだけど今日はシノの横顔に惹かれちゃったよ」
「ウフフッ、タケと手をつないで歩く淡路島の砂浜。そんな二人をもう一人の私が笑顔で見つめている情景を想像した」
「可愛いなぁ……砂浜に押し倒して唇を奪いたい……」
「イヤッ、そんなに見つめないで……前を見て運転してよ。アンッ、濡れちゃう」
「クククッ、本気で押し倒さないとシノは狂っちゃいそうだな」
「うん、押し倒して…私を奪ってほしい。タケの女になりたい……一つ、質問をしても怒らない??」
「内容によるよ。どんなこと??」
「怒られるかもしれないなら止めとく。質問をしたいというのは忘れて……」
「分かった。昼はバーベキューを予約したけどいいかな??」
「淡路島だから海鮮バーベキュー、それとも淡路牛かなぁ。楽しみ、昼は魚介で夜は肉、ウフフッ、作業着もスーツ姿もチノパンも車も全て、格好いいし似合っている」
「シノの黒いパンツスーツ、店でのドレス。頭ン中の画集の最初に出てくるよ」
「嫌な男、画集には奥様以外に何人の女性が描かれているの??」
「ほとんどの女性を妻が知っているし、たくさんの女性を知っているわけじゃない」
「……奥様公認ってわけなの??」
「公認ってわけじゃないけど、妻に言わせると男は二種類。立小便は悪い事だからと絶対にしない男と、人が見ていないとか大きな迷惑をかけなければしてもいいと考える男。オレは後者だと思われているらしい」
「浮気を立小便に例える奥様なの??ご自分に自信を持っている人なんだ。知り合った頃は何をしていたの??……聞きたかったことなの。奥様に申し訳ないことをしているって自覚があるから……」
「シノと同じような仕事をしていてオレは大学生。子供が出来たらしいと言われて結婚した」
「学生なのにオミズの女性と付き合っていたんだ。クククッ、まじめな学生だったんだ」
「妻とはお互いに便利な男と女、きちんと付き合っていた仲じゃなかったよ……そんなこんなで、結婚する時に出された条件が、水商売以外の女性とは付き合わない、妻よりも年下の女性とは付き合わないという二つ。そうだ、オレの両親や妹の家族と良好な関係で、関係が上手くいかなくなった時はオレを追い出して妻を家族として認めると言っている。オレにとっては最高の言葉で妻を評価してもらっているよ」
「じゃぁ、私の年齢は少々問題がありそうだけど、行き過ぎたことをしなければ関係を続けても差し障りはないんだね……今日は絶対に押し倒してもらっちゃうよ」

高速道路から見える景色から海が消え、のどかな田園風景が広がったと思うと再び海が見えてを繰り返すうちに高速を降り、20分くらいで着くと思うよとタケは告げる。
淡路島の東海岸を南下すると開け放った窓から忍び込む磯の香りが二人をいつもと違う世界に誘ってくれる。

「ここなの??三宮を出発してから一時間も経っていないのに全然違う景色と海の香りが迎えてくれて、別世界に来たような気がする」
駐車場に車を入れるとシノは邪気のない笑顔で周囲を見回し、両手を宙に伸ばして大きな息と共に清々しい空気で身体を満たす。
タケが手を伸ばすと迷うことなく手をつなぎ、眩しそうに横顔を見つめて歩を進める。

「予約しておいた柏木です」
「いらっしゃいませ。お待ちしていました……ご案内いたします」
テラス席に案内されると、タケは直ぐに用意してくださいと告げ、今日はこのまま帰らなければいけないのでアルコールはいらないと言う。

アワビやイセエビ、サザエなど海鮮スペシャルセットと牛カルビや豚ロースなどの焼き肉セットが用意される。
バイキングコーナーの野菜サラダを山のように盛ったシノは、
「ディナーは朱莉ちゃんと一緒でしょう。ランチはこんなだったよと教えてあげよう、悔しがるだろうな、ウフフッ」
スマホを取り出してバーベキューセットや目の前に広がる青い海を撮影し、タケに寄り添うように座って肩に頬を寄せ、自撮りを済ませると満面の笑みで向かい合う席に戻る。

一目惚れしたというタケを前にしてもシノは健啖ぶりを隠そうとせずに皿を空けていく。
「大食いの女は嫌い??」
「シノは何をしても好ましく見えるし、予約した食事に満足してくれたようで嬉しいよ」
デザートを食べ終わり腹がくちくなったシノの表情は雲一つない空のように晴れやかで、どこまでも続く青い海のように澄みきっている。
コーヒーとミルクの層がきれいに出来上がったアイスラテのグラスを手にして、満足そうに笑みを浮かべるシノがバーベキューを食べ始めるまで淫蕩な思いを隠そうともせずに困らせるような言葉を口にしていたことを思い出したタケは意地悪な笑みを浮かべる。
「ねぇ、どうしたの??変なことを考えているでしょう??」
「そうだよ、オレは意地悪な男だよ、シノ。下着を脱いでオレに渡しなさい」
「うそ、今、此処で??」
「そうだ、今すぐにだ。出来るだろう??」
「ハァハァッ、タケがこんなに意地悪な男だと思わなかった」
「イヤなら脱がなくてもいいよ。可愛い女に嫌がることはさせたくないからね」
「いじわる、タケの命令に逆らえないって知っているくせに……誰も見ていないよね、脱いじゃうよ」

手にしたままのアイスラテをゴクリと飲んだシノは周囲の人たちが食事に夢中になっているのを確かめ、一瞬目を閉じて息を吐き、意を決したように脱ぐよと呟いて両手をスカートの中に潜らせる。

「脱いだよ。どうすればいいの??」
「預かっておくからよこしなさい」
「いやな男……こんな男に一目惚れした私はバカな女」
言葉とは裏腹に頬は緩み、握った手の中で丸めたショーツをタケの手の平に押し付ける。
「オレはディナーの後、帰らなきゃいけないからシノと朱莉ちゃんで泊っていくか??」
「どういうこと??」
「このまま何もしないでシノとバイバイする気がないから部屋を取って一発やるのはどうかと思って…朱莉ちゃんの都合が悪いとか泊りは嫌だって言えばデイユースでもいいんだけど、どうだろう??」
「クククッ、生々しい言葉。海鮮バーベキューや淡路牛の後はホテルで私を味わって、締めは神戸牛なの??贅沢な男…ウフフッ」
「朱莉ちゃんに申し訳ないからベッドは使わないようにするけどね」
「うん、変態チックに抱かれてもいい。タケの匂いが残る部屋で朱莉ちゃんと宿泊する」
「朱莉ちゃんの都合を確かめなくてもいいの??」
「そうだね、連絡してみる……もしもし、朱莉……そう、ドライブを兼ねて淡路島に来て昼食を終わった処……ウフフッ、で、相談なんだけどディナーを終えた後、私とホテルに泊まらない??……そうなの、タケが我慢できないらしいの……うん、タケって柏木さんのことだよ。デイユースじゃなくツインルームを予約するからやらせろって言うの……ウフフッ、匂いや気配が残っていればゴメンね。それじゃあ、18時にね」
「朱莉ちゃんは承諾してくれたようだね。部屋をとるよ……今晩、ツインルームを予約できますか…………取れたよ。シノの希望通り砂浜で遊んでいこうか」
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ちっち

Author:ちっち
オサシンのワンコは可愛い娘です

アッチイのは嫌
さむいのも嫌
雨ふりはもっと嫌・・・ワガママワンコです

夜は同じベッドで一緒に眠る娘です

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