2ntブログ

不倫 ~immorality~

再会―5

一瞬とはいえ、健の目的が彩の身体なのかと思うと20年の時間を埋めて打ち解けたはずの雰囲気が気まずいものになる。
「ごめん、来てくれないと思っていた彩に会えたので調子に乗っちゃった・・・本当にごめん・・・後楽園でジェットコースターに乗ろうか??」
「クククッ・・・今はね、後楽園遊園地じゃなく、東京ドームシティって言うんだよ・・・それに、無理しなくていいよ」
気まずい雰囲気にしたことを後悔する健は努めて明るく振る舞おうとするが、それが余計に居心地の悪い空気を作る。

小石川植物を出て当てもなく歩く二人の間に微妙な距離ができ、その距離を縮める方法も分からず黙々と歩く。
20年ぶりに身体を開くことを夢見ながらも、いざとなると踏ん切りのつかない自分を訝しく思う彩は意を決する。
「ミロでナポリタンを食べてから時間も経ったし、お腹が空いちゃった・・・」
「少し早いけど、夜景を見ながらの食事ってどうかな??夜景のきれいな・・・いや、何でもない・・・」
「ウフフッ・・・夜景のきれいなホテルを予約してあるの??」
「うん・・・・・ごめん」
「変な意味じゃなく、予約してあるホテルがどんなだか確かめたいな・・・彩への評価が分かるような気がするから・・・そのホテルで食事しようか??」
「わかった・・・ごめんね」
「あのね、何度も謝んないでくれる・・・謝られると惨めになる。健が彩に対して下心があって、それを拒否する度に小出しに条件を出されているようで嫌なの」
「・・・・・分かった」

関係が遠のくと記憶も薄れ、遠ざかっていた記憶が鮮明なものになると関係も旧に戻る。
そう思うものの、20年の時を埋めるのは容易なことではなく、焦れば焦るほど
新たな取り返しのつかない溝ができそうになる。
居心地の悪さから逃れようとする健は、心ならずも生まれた溝を埋めようとして、おずおずと手を伸ばす。
忍びやかに伸びた指先が彩の手に触れる。
再び二人の距離が縮まり、些細な行き違いで遠ざかることを恐れる彩は健の指を握る。
健は手に力を込めて握り返し、二人は顔を見合わせることなく握り合う手の温もりで20年の時を埋めていく。
春日通りを空車のタクシーが走り去るのを見ながら飯田橋駅を目指して二人は歩く。タクシーでホテルに向かうのが便利で早いのは分かっていても、今のこの時間を変化させることに恐れを抱く。
手を離した彩は偶然を装い、健の腕を抱きかかえるようにして身体を濃密に密着させて乳房を押し付ける。
ゴホンッ・・・健は腕に押し付けられた乳房の感触で、20年前と違い大人の女性に変化した彩を感じると同時に動悸が早くなるのを感じて、わざとらしく咳払いをする。

飯田橋駅で総武線に乗り、市ヶ谷駅近くの釣堀が見えると彩が指差して、
「覚えてる??市ヶ谷フィッシュセンター・・・全然、釣れなかったよね」
「そうだったっけ??」
「彩が怒った振りをしたら・・・クククッ、健は金魚を買ってきて・・・クククッ、釣れた、釣れたって大騒ぎ。金魚を持って帰ったんだよ」
「そうだった、そんなことがあったね。釣れないのは、オレのせいだって言うから金魚を買ったんだ・・・」
ドアガラスに身体を寄せて釣堀を指さす彩と重なるようにして外を見る健は、互いの体温を感じるほど頬を近付けてキスとは違う興奮をしているはずなのに、やっと居場所を見つけたような落ち着きを感じる。

四谷駅で降りて上智大学を見ながらホテルに向かう。
都心にありながら緑豊かなホテルは宿泊や食事だけではなく愛を語らう散策にも向いている。
手をつないだまま歩いてメインエントランスから館内に入った健は声をかける。
「どうする??・・・食事にする??それともバーに行く??」
「う~ン・・・なんか疲れちゃった。予約してあるんでしょう??部屋で休憩したい」
「エッ・・・・・じゃぁ、フロントに行かなきゃ」

チェックインを済ませた健は、ベルボーイの案内を断りエレベーターホールに向かう。
エレベーターに同乗する人はなく、二人きりになった途端、彩はしなだれかかる。
「今更だけど、彩、泊まっても良いの??」
「嫌なことを聞かないで・・・彩をその気にさせるのが健の腕でしょう??キスして・・・」
小柄な彩は、健の胸に寄り添いながら潤んだ瞳で見上げて目を閉じる。
そっと唇を合わせた健は、
「楽しみは、後に取っとかないと・・・」
チン・・・「バカッ、彩がキスして欲しいって言ってるのに・・・恥をかかせないでよ・・・」そう言う、彩の顔には笑みが浮かぶ。
健が知っている彩の笑顔があった。

物音一つしない廊下を進み、部屋に入った途端、健は彩を壁に押し付けて唇を奪う。
20年前の感触を思い出すように一瞬の内に濃厚なキスをして、いったん離れ、彩の顔を覗き込んで、可愛いよ、会いたかった・・・目を真っ赤に染めた健が囁く。
「彩も会いたかった・・・20年間ずっとこの日を待っていたような気がする・・・抱いて・・・健の好きなように彩を可愛がって・・・」
ついばむように唇をつつき、離れてはくっつき、くっついては離れるという事を繰り返しながら唾液を交換するような濃厚なキスに変化する。
「ハァハァッ・・・だめ、もうダメ、立っていられない」
彩を抱きかかえてベッドに運び、投げるように寝かせる。
「イヤンッ・・・優しくしてくんなきゃ嫌っ・・・キスしてくれたら、許してあげる」
笑みを湛えて目を閉じる彩の額にチュッと唇を合わせた健は、カーテンを全開にして窓いっぱいの景色を目で示す。
「彩も可愛いけど、この景色もいいな・・・目移りしちゃうよ」
六本木ヒルズなど六本木、赤坂から東の方角に高層ビルが立ち並び、正面の奥には東京タワーが見える。
「すごい・・・きれい・・・でも、彩がこの景色に負けるのは嫌だな。健には彩が一番でなきゃ嫌だ」
「う~ん・・・六本木ヒルズや東京タワーに負けないほど魅力的な彩になる方法があるよ・・・」
「どうすればいいの??」
淫蕩な期待で頬が紅潮し、自然と声が上擦る。
関連記事

テーマ : 18禁・官能小説
ジャンル : アダルト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

ちっち

Author:ちっち
オサシンのワンコは可愛い娘です

アッチイのは嫌
さむいのも嫌
雨ふりはもっと嫌・・・ワガママワンコです

夜は同じベッドで一緒に眠る娘です

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード