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堕ちる

幸子の悲劇-1

「ただいま」
「お帰り、疲れただろう。夕食の用意も出来ているしお風呂もすぐに入れるよ」
「お風呂に入る・・・来ないで、一人で入りたいの」
分かったよと答えた新田は帰宅後の瑞樹に触れようともせずにバスルームに向かう後ろ姿を見つめる。

秘密カジノの受付を担当する瑞樹も、今日の紗耶香のようにカジノで背負いきれない借財を抱えて身体を提供する準備のための調教と称する場に立ち会うこともある。
紗耶香は新田がスカウトした女性だという事は知っているし罠にはまるところから見ているだけに平静ではいられない。
OLとしてキャリアを積んでいた瑞樹も新田の仕掛けた罠にかかってクラブに身体を預けることになったが、一度も娼婦のような事はしないまま受付業務に就き新田に愛されて暮らしている。
新田と紗耶香が身体を重ねていないわけがなく、それは仕事と割り切っていても嫉妬の気持ちもあるし同性として紗耶香の辛い気持ちもわかるだけに、帰宅早々にキスを求める気にならないし穢れているような気がして汗と一緒にそれらを洗い流すまでは愛する新田には触れてほしくない。
紗耶香に対する気持ちを汗と一緒に流して新たな気持ちで新田に寄り添うのが調教に参加した時の常である。

心地良いシャワーを全身に浴びて目を閉じると複数の男性と女性を相手にして悦ぶ紗耶香の姿が思い出される。
新田がこれと見込んで罠にかけた女性なので身体で支払いをすることになっても他人が想像するほど悲しむ事はなく、むしろ楽しみ感謝さえしてくれるかもしれない。
そんな事を思い浮かべながら熱めにした湯をかけてバスタブに浸かり目を閉じる。
新田と出会わなかったらどんな生活をしていただろう。
あの時のまま仕事を続けていたら・・・望んでいた結果を得ることが出来ただろうと確信できる。
今は不幸なのか・・・否。新田に愛されて過ごす今は幸せ。仕事を続けていれば今とは全く違った幸せがあっただろうと思うもの後悔する事はない。
紗耶香はどうだろう・・・罠にかけた新田も紗耶香の幸せを望んでいる事は分かる。
紗耶香が思い描いていた幸せではなく、心の内に潜んでいた性的好奇心をあからさまにして本人が気付いていなかった幸せの形を提供すると同時に、新田も幸せのオコボレを頂戴するという事で瑞樹もそうなる事を望んでいる。

「可愛いよ・・・キスさせてくれる??」
「うん、貴男のキスが好き・・・それに騙されて、こんな事になっちゃったんだけどね」
「オレは瑞樹を騙したか・・・そうか、そうだな。騙してでも瑞樹と付き合いたかった」
「悪かったと思ってる??・・・ウフフッ、貴男の困ったような表情が好き。自信満々で嫌な男だから」
デニムのショートパンツに新田の青いシャツをラフに着こなした瑞樹は悪戯っぽく瞳をクルクル動かしながら困り顔を覗き込む。
瑞樹の腰に手をかけて引き寄せ、腿を跨ぐようにして座らせる。
「嫌なことを言うのはこの口だな。しゃべれないようにしちゃうぞ」
言い終わるや否や唇を重ねて瑞樹が感じているであろう紗耶香への思いを吹っ切らせるために激しくキスをする。
「ハァハァッ、激しい・・・優しいよね、女はそんな貴男に騙されちゃう。紗耶香さんとの事を忘れさせようとしてくれたんでしょう??お風呂に一人で入りたいと言っても気持ちを忖度してくれるしね・・・」
「買い被るなよ、オレは瑞樹に嫌われたくないだけだよ・・・それより、お腹が空いてないの??」
「そう言ってくれるのを待ってた。お腹はペコペコ・・・好い匂いがするんだもん」

テーブルにはローストスペアリブ、ハッシュドポテトなどと一緒にシャンパンクーラーで冷やされた白ワインが用意されている。
「貴男は頑固だよね。どんな時でもワインは白、赤よりもキンキンに冷えた白が好きなんでしょう。私は貴男のせいで赤ワインの味を忘れちゃった」
「スペアリブをローストする前に赤を使ったから許してもらえるかな??・・・オレもお腹がペコペコ。座って・・・」

「美味しい・・・キリッと冷えたワインがスペアリブを引き立ててくれる。料理上手な男性って格好いいよ」
「前にも言ったけど料理に限らず家事全般クリエイティブな仕事だと思ってる。料理は献立を決めて食材を整える、あるいは食材に合わせて献立を決める。調理しながら不要なものを片付ける段取りの良さは会社での仕事にも通じると思うし掃除なども同様だと思う」
「うん、一時期、流行った右脳、左脳云々ってのに通じるよね。料理は右脳を使う作業だと思うから左脳を使って仕事をする人には気分転換になると思う」

食事を終えた新田は部屋の灯りを消してアロマライトを点け、イランイランをベースに調合してもらった妖艶で濃厚なオイルを垂らす。
ソファに座る新田に寄り掛かった瑞樹は延ばした足を反対側の肘掛けに載せて目を閉じる。
「エッチな気分になっちゃうね、この香りは・・・クククッ、何を見てるの??」
「目を閉じてもオレが何をしているのか分かっちゃうんだね・・・瑞樹のムッチリあんよを見ている。デニムのショートパンツが似合ってるよ」
「ウフフッ、貴男を篭絡するのは簡単・・・って、女に思わせるのが上手。私も紗耶香も見事に食いついた」
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ちっち

Author:ちっち
オサシンのワンコは可愛い娘です

アッチイのは嫌
さむいのも嫌
雨ふりはもっと嫌・・・ワガママワンコです

夜は同じベッドで一緒に眠る娘です

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