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彩―隠し事 54

土曜日 隠し事を意識する

多摩川土手に立って西の方角を見ると夕日が雲と山の稜線をオレンジ色に染め、温かくて柔らかい色が昼間の疲れを慰めてくれて一日の終わりが近付いたことを教えてくれる。
早朝、同じ場所に立って昇る朝日が雲の東側の縁をオレンジ色に染め、空が色付いて東や南向きの窓ガラスにキラキラ反射するのを見ると、同じオレンジ色でも一日に必要なエネルギーが身体や建物に溜まっていくのを感じることが出来る。

多摩川に別れを告げて、もう少し下流で合流する残堀川を渡り根川緑道沿いに東に進むことにする。
湧水口から四季を問わず湧き出す水が小川に棲む生き物や草木の命を守っている。少し前までは、誰が放したのかグッピーの群れを見ることも出来たが親子連れや子供たちが網を片手に連れ帰ったようで今は姿を見ることがない。
湧水口がある場所の近くは歌人・若山牧水の奥様の喜志子が住んでいた場所があり旧宅を見ることはできないが歌碑が建っている。夫、牧水は勿論、旅人の歌碑も市内にある。
他にも高村光太郎の詩碑や水原秋櫻子の句碑など多くが市内の彼方此方に建っており、駅北口の彫刻と合わせて芸術と縁のなかったオレも気軽に楽しむことが出来る。
オレが好きな中村草田男の、冬の水一枝の影も欺かずという句碑はここから数分の場所に建っている。
鯉が悠然と泳ぎ、見慣れた黒っぽい色だけではなく紅白や三色、金色で飾り立てている。
桜の花が散り、鴨のカップルは初夏になると子供連れで愛らしい姿を見せ、その頃にはカワセミを見ることもできる。

夕方の散策を楽しむ人やワンコ散歩する人たちに混じって歩く彩は、セーターとスカートの中には下着を着けておらず、股間にはチャームが鈴のラビアクリップをつけている事を意識する。
チリンチリン……小川のせせらぎや自然を愛でる話し声に混じって、彩には鈴の軽やかな音色が聞こえるような気がする。
ワンコ散歩中の男性が彩の顔をじっと見つめ、視線が顔から足元まで値踏みするようにねめ回すと彩の動悸が激しくなる。
歩みを止めることなく小柄な彩が健志の横顔を見上げると、
「うん??どうしたの??」
「変な音が聞こえない??大丈夫??」
「どんな音??」
「いじわる。すれ違った男性が彩の事を上から下まで値踏みするように見つめるんだもん、あの音に気付いちゃったんじゃないかと思ってドキドキする」
東屋で遊歩道に向かって椅子に座った健志は太腿を跨いで通り過ぎる人たちに背を向けて彩を座らせ、自然な風でスカートのボタンを下から二つ外してしまう。
「えっ、どうして??やめて」
「すれ違いざま、彩の事を見つめた男がいたって言っただろう。鈴の音が聞こえたからじゃないよ、彩の放出するフェロモンのせいだよ」
健志の手がスカートの中に忍びこんで股間に伸びてバギナをくすぐり、蜜にまみれて滑りを帯びた指を彩に突き出すと、
「やめて、気付かれちゃう」
「平気だよ。彩は一見、清楚な人妻に見える。そんな彩がノーパンノーブラでビラビラに鈴をぶら下げて歩いているとは思わないよ」
「声が大きい。健志の事を信じてアソコに飾りをつけたまま歩いているけど足はがくがく震えるし、今も息をするのが苦しいくらいドキドキしてるんだよ」
「そんな風に見えないけどな、彩は楽しんでいるように見えるよ。これが彩の男を呼び寄せるフェロモンの正体。マンチャンをグジュグジュに濡らしてマン汁を垂らしながら歩いているなんて、彩を見たうちの何人が想像する??大丈夫だよ」

チリンチリン……再びスカートの奥に忍び入った指が鈴を弾くと可憐な音が響く。
一瞬、歩みを止めて二人を見つめる人がいるものの、仲の良いカップルが仲睦まじく座っているのを見ると邪魔をしては申し訳ないと言わんばかりに直ぐに視線を逸らしてくれる。
遊歩道に背を向けて羞恥と不安に苛まれる彩には見えないけれど、立ち止まった足音が直ぐに歩き始める様子を感じ取って安堵する。
「行こうか」
「スカートのボタンは??」
「ほんの少し緊張していた方が彩は色っぽいよ。オレが守るからすれ違う男をほんの少し挑発してみなよ」
「だ~め、そんな事は出来ない。彩は健志だけでいいの……今はね、ウフフッ」
彩は心の奥で育ち始める淫靡で淫蕩な思いを持て余す。

学生時代からの親友である栞は昔から性に奔放で欲望を隠そうとしない。
ご主人を愛していると公言しながら、今もまた課長を挑発して味見してみるなどと言う。
そんな栞に連れられてSMショークラブやAV撮影の現場を見学する機会を得た彩は健志と出会い、見ず知らずの人たちの乱交を見ながら健志とつながり絶頂を迎えた。
誰もが清楚で貞淑な妻という優子が密かに隠し持っていた淫靡な想いを具現化した彩に変身した時、このままでいられるとは彩自身も思えない。
亭主でもなく健志でもない男に抱かれる日が近付いてきたように思う。

チリンチリン……微かに聞こえるか聞こえないかの鈴の音が彩にははっきり聞こえる。
それは清楚で上品な優子が淫らな享楽に耽る彩に変身する合図のようであり、長年隠し続けていた隠し事があからさまにする切っ掛けでもある。

根川緑道から立日橋北で新奥多摩街道を渡り、多摩都市モノレールに沿って駅南口を目指す。
北口と違ってそれほど人通りも多くなく、鈴の音だけではなく足を踏み出す度に白い太腿がチラチラ見えるのを知っているはずなのに臆することなく健志に手を引かれて歩く。
「彩、合図するまでここで待っているんだよ」
数メートル先に進んだ健志は振り返り彩を手招きする。
チリンチリリン……人通りが少なく、街の喧騒も北口ほどではないこの場所では耳を澄ますと鈴の音が聞こえる。
「手をつないでもらっていると怖い事はないけど、数メートルでも彩1人で歩くとドキドキする」
「オレは鈴の音もそうだけど、足を踏み出す度にチラチラする太腿に昂奮するよ。ボタン二つでこれだろ、もう二つ外すとどうなるかな??」

駅に近付くにつれて人通りが多くなり、健志の手を握る彩の手の平がじっとり汗ばみ、チラチラと横眼で見ては息を弾ませる。
右の路地に入り左に折れると正面に目指すコンビニの看板が見える。
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ちっち

Author:ちっち
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アッチイのは嫌
さむいのも嫌
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