彩―隠し事 120
萌芽 -16
週末の夜とあってすれ違うのは二人を気にする様子もなく家路を急ぐ人たちだけで他人を気にせずに寄り添って歩くことが出来る。
「駅の近くだともしかすると知り合いに会うかもしれないと気になるけど、彩に縁のないこの街の住宅街は安心して健志に寄り添える……幸せ」
「二人の関係を知っているのはお月さまだけだし優しく見守ってくれてオレたちの味方のようだね」
「ウフフッ、ほんとう……来週が待ち遠しい、遠くの街で何も気にせず笑ったり甘えたりできるんだよね」
人通りが途絶えると健志の右手が彩の胸に伸びて、
「これは誰のオッパイか教えてくれる??」
「知らないの??オッパイだけじゃなく、この身体はすべて健志のモノ、嬉しい??」
「あぁ、嬉しいよ」
身体だけではなく心もあげると言いたくなるのをあえて口にはしない。
互いの身体だけを貪るだけではなく気持ちも自分に向けさせようとか、もっと時間を共有したいと思うことが間違いの元だと知る分別は残っている。
「ねぇ、健志のことは信じているけど今から何処へ行くの??」
「買い物だよ、朝食のパンがなかったのを思い出した」
「えっ、本当なの??それだけ??」
「彩は他に何か欲しいモノがあるの??」
「そうじゃないけど……前開きのワンピがいいって言うから期待したのに買い物だけなの??」
彩の肩に手を置いて正対した健志は
「分かった……パンとチーズを買う積りだったけどエロイ店に行こう、彩が満足してくれるどうか分からないけど」
手にしたスマホで何処かに連絡し、二人だけど大丈夫かと確かめて見るだけだと伝えた健志はニコリと微笑む。
「朝食のパンはナシ、何かあるだろう。行こうか」
「この街の陰の部分に連れて行ってくれるの??」
「そうだよ、ダークシャドー、暗い影にして深い闇。危険な事はないけど、これまで心と身体の奥に棲みついていた妖しい自分の本質が姿を見せるかもしれない」
「健志と一緒なら平気。昼間の私じゃなく彩に変身した時は性的な欲望が強くなるから守ってね」
目が眩むばかりに毒々しい灯りで欲望に満ちた人たちを誘う一角に入り込む。
風営法や迷惑防止条例によって客引きは規制されたが猥雑な雰囲気は残り、善悪を超えた欲望を貪欲に飲み込んでしまう妖しい雰囲気に満ちている。
健志の腕にすがるように歩いている彩に、
「良い店があるよ。お姉さんならいくらでも稼げるし今の2倍は保証するけど、どう??話だけでも聞いてよ」
そんなスカウトを無視して健志は深い闇を目指して歩いていく。
禍々しいばかりの灯りがなくなり淫猥な雰囲気が支配する場所は、この街の欲望の最深部と思えて彩の昂奮と不安は頂点に達して唾を飲み、早口になって声は上ずり早鐘を打つ心臓が口から飛び出さんばかりになり健志の腕を掴む手に力がこもる。
「ゴクッ……ねぇ、着いたの??何処なの?? 」
「ここじゃないよ。こんなヤバイ雰囲気のする場所じゃない。もう少し先だよ」
「えっ、そうなの……」
闇を通り過ぎると明るさが増し、振り返った彩はフゥッ~と安堵の息を吐く。
「着いたよ、このマンションがそうだよ」
目の前の建物は卑猥な雰囲気を醸すこともなく何の変哲もないマンションに見える。
「ここなの??そうなの??普通のマンションのようだけど……」
マンション住人とは別の入り口から専用の鍵で建物に入ると赤いライトが作動していることを示す監視カメラに迎えられる。
1階と最上階の表示しかないエレベーターに同じ鍵を使って乗り込む。
チン……エレベーターが開くとそこは玄関ホールになっている。
直ぐにドアの一つが開いてゆったりとしたワンピース姿の女性が姿を現す。
「いらっしゃいませ、彩さん。彩さんでしたよね、同伴者がタケとは意外でした」
「カヲルさん??そうですよね??」
「そうです、見知らぬ人たちの前でオッパイ丸出しの彩さんを縛って差し上げたカヲルです」
「どうだろう、挨拶はそこまでにして入れてくれないかな」
「ごめんなさい。彩さんとお会いしたいなと思っていたので昂奮しています……今日は見学だけと聞いて残念です……どうぞ、もう始まっています」
出てきたドアとは別のドアを開けて、カヲル、彩、健志の順で入室する。
「いやぁ~ン、こんな蛇の生殺しのような格好のまま放置しないで、誰でもいいから遊んで、私をオモチャにして、早く」
ギシギシッ……黒い布で目隠しされた素っ裸の女性が大股開きで股間を突き出すようにして椅子に縛られ、悪戯されたいと軋み音を立てるほど身体を揺すり立てている。
「ゴクッ、なに??何をしているの??」
自分でも間の抜けた質問だと思うものの目の前の出来事は全く予期していないことなので、こんな言葉しか発することが出来ない。
「彩、見てごらん」
背後に立った健志が肩を抱くようにして部屋の全容を見るように促し、彩は視線を巡らす。
カップルに交じって一人で来たらしい男性もいるようだが椅子に縛られた一人と彩を含めて女性は四人、男性が五人、それとカヲルを含めて十人の男女が性的嗜好を満足させようとしている。
「彩さん、あのドアの向こうに一人の女性を悦ばせようとしている男性二人がいるわよ」
彩を見つめていたカヲルは巡らす視線で人数を数えていることを知り、悪戯っぽく話しかける。
週末の夜とあってすれ違うのは二人を気にする様子もなく家路を急ぐ人たちだけで他人を気にせずに寄り添って歩くことが出来る。
「駅の近くだともしかすると知り合いに会うかもしれないと気になるけど、彩に縁のないこの街の住宅街は安心して健志に寄り添える……幸せ」
「二人の関係を知っているのはお月さまだけだし優しく見守ってくれてオレたちの味方のようだね」
「ウフフッ、ほんとう……来週が待ち遠しい、遠くの街で何も気にせず笑ったり甘えたりできるんだよね」
人通りが途絶えると健志の右手が彩の胸に伸びて、
「これは誰のオッパイか教えてくれる??」
「知らないの??オッパイだけじゃなく、この身体はすべて健志のモノ、嬉しい??」
「あぁ、嬉しいよ」
身体だけではなく心もあげると言いたくなるのをあえて口にはしない。
互いの身体だけを貪るだけではなく気持ちも自分に向けさせようとか、もっと時間を共有したいと思うことが間違いの元だと知る分別は残っている。
「ねぇ、健志のことは信じているけど今から何処へ行くの??」
「買い物だよ、朝食のパンがなかったのを思い出した」
「えっ、本当なの??それだけ??」
「彩は他に何か欲しいモノがあるの??」
「そうじゃないけど……前開きのワンピがいいって言うから期待したのに買い物だけなの??」
彩の肩に手を置いて正対した健志は
「分かった……パンとチーズを買う積りだったけどエロイ店に行こう、彩が満足してくれるどうか分からないけど」
手にしたスマホで何処かに連絡し、二人だけど大丈夫かと確かめて見るだけだと伝えた健志はニコリと微笑む。
「朝食のパンはナシ、何かあるだろう。行こうか」
「この街の陰の部分に連れて行ってくれるの??」
「そうだよ、ダークシャドー、暗い影にして深い闇。危険な事はないけど、これまで心と身体の奥に棲みついていた妖しい自分の本質が姿を見せるかもしれない」
「健志と一緒なら平気。昼間の私じゃなく彩に変身した時は性的な欲望が強くなるから守ってね」
目が眩むばかりに毒々しい灯りで欲望に満ちた人たちを誘う一角に入り込む。
風営法や迷惑防止条例によって客引きは規制されたが猥雑な雰囲気は残り、善悪を超えた欲望を貪欲に飲み込んでしまう妖しい雰囲気に満ちている。
健志の腕にすがるように歩いている彩に、
「良い店があるよ。お姉さんならいくらでも稼げるし今の2倍は保証するけど、どう??話だけでも聞いてよ」
そんなスカウトを無視して健志は深い闇を目指して歩いていく。
禍々しいばかりの灯りがなくなり淫猥な雰囲気が支配する場所は、この街の欲望の最深部と思えて彩の昂奮と不安は頂点に達して唾を飲み、早口になって声は上ずり早鐘を打つ心臓が口から飛び出さんばかりになり健志の腕を掴む手に力がこもる。
「ゴクッ……ねぇ、着いたの??何処なの?? 」
「ここじゃないよ。こんなヤバイ雰囲気のする場所じゃない。もう少し先だよ」
「えっ、そうなの……」
闇を通り過ぎると明るさが増し、振り返った彩はフゥッ~と安堵の息を吐く。
「着いたよ、このマンションがそうだよ」
目の前の建物は卑猥な雰囲気を醸すこともなく何の変哲もないマンションに見える。
「ここなの??そうなの??普通のマンションのようだけど……」
マンション住人とは別の入り口から専用の鍵で建物に入ると赤いライトが作動していることを示す監視カメラに迎えられる。
1階と最上階の表示しかないエレベーターに同じ鍵を使って乗り込む。
チン……エレベーターが開くとそこは玄関ホールになっている。
直ぐにドアの一つが開いてゆったりとしたワンピース姿の女性が姿を現す。
「いらっしゃいませ、彩さん。彩さんでしたよね、同伴者がタケとは意外でした」
「カヲルさん??そうですよね??」
「そうです、見知らぬ人たちの前でオッパイ丸出しの彩さんを縛って差し上げたカヲルです」
「どうだろう、挨拶はそこまでにして入れてくれないかな」
「ごめんなさい。彩さんとお会いしたいなと思っていたので昂奮しています……今日は見学だけと聞いて残念です……どうぞ、もう始まっています」
出てきたドアとは別のドアを開けて、カヲル、彩、健志の順で入室する。
「いやぁ~ン、こんな蛇の生殺しのような格好のまま放置しないで、誰でもいいから遊んで、私をオモチャにして、早く」
ギシギシッ……黒い布で目隠しされた素っ裸の女性が大股開きで股間を突き出すようにして椅子に縛られ、悪戯されたいと軋み音を立てるほど身体を揺すり立てている。
「ゴクッ、なに??何をしているの??」
自分でも間の抜けた質問だと思うものの目の前の出来事は全く予期していないことなので、こんな言葉しか発することが出来ない。
「彩、見てごらん」
背後に立った健志が肩を抱くようにして部屋の全容を見るように促し、彩は視線を巡らす。
カップルに交じって一人で来たらしい男性もいるようだが椅子に縛られた一人と彩を含めて女性は四人、男性が五人、それとカヲルを含めて十人の男女が性的嗜好を満足させようとしている。
「彩さん、あのドアの向こうに一人の女性を悦ばせようとしている男性二人がいるわよ」
彩を見つめていたカヲルは巡らす視線で人数を数えていることを知り、悪戯っぽく話しかける。