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転身 

―5

人並み以上の容姿を持ちながら170cm超えの身長のせいで誘ってくれる男は少なく、他人が想像するほど桜子の男性経験は多くない。
地元に戻って塾の講師になる前、東京でキャバクラ勤めだった時に店の常連だった高浜が退社したけど同期入社以来の友人だと言って連れてきたのが桜子を羽化登仙の境地に誘おうとする柏木だった。

場所柄、仕事帰りや接待名目の客が多く、白パンツにネイビーブルーのカットソー、グレーのジャケットを合わせた柏木は長身でもあり新鮮に映った、
桜子に気のある素振りを見せなかったが話しかけると嫌がる風もなく相手をしてくれて、相槌を打つ時に身体に触れても期待したような反応はなかった。
その夜、自宅に帰り寝ようとしても寝つけず、もしかすると一目惚れかと苦笑いした。
十日ほど後に高浜が来店した時に柏木は同行しておらず、いつでもいいからお二人をお迎えできれば嬉しいなと、はしたない言葉を口にしてしまった。

それほどの日を置かずに高浜は柏木を伴って来店してくれた。
前回と違ってシャドーストライプのチャコールグレースーツにホワイトシャツを着けてペイズリー柄のネクタイを締めた柏木の隣に座ると、一目惚れしたかと思ったことが確信に変わり、さりげなくネクタイがバレンシアガ製であることを確かめた。
この日の桜子は高浜の視線を気にすることなく柏木を見つめ、それに気付いた高浜は黙って首をすくめ、後日、桜子ちゃんは柏木と付き合っているだろうと言われるほど、あからさまだったらしい。
特別の関心を寄せようとしない柏木に不満を覚えた桜子は悪戯心を抑えることができず、お客様に対して一度もしたことがなかった太腿に両手を添え、指先に力を込めて性的な連想を催させようとした時も自然な風で桜子の髪を一撫でするだけで終わった。
普段、お客様に髪に触れられると不快に思うことが多かったが、この時は全身の力が抜けて男の身体に寄り添いたいと思う気持ちを抑えるのに苦労した。

お見送りの時、高浜様には秘密で連絡くださいと書いたメモを渡すと翌日、スマホに着信があった。
デートの約束をして待ち合わせのホテルのロビーに現れた男は満面の笑みで包み込んでくれ、その後の二人の時間を期待せずにいられなかった。
店のお客様との同伴で一人では入れそうもない高級店で食事を一度ならず経験していたが、男は桜子の期待を裏切らないようにと、オレは高級な店を知らないから今日は普段通りのオレに付き合ってもらうよと告げて、アクアライン経由で房総半島に向かった。

クジラ料理専門店での食事は地魚も含めて店主の自慢を超える満足感で自然と笑みが浮かび、午後から夜を期待せずにはいられなかった。
50男との初デートは期待した大人の遊び心を見事に裏切られて連れていかれたのは、鴨川シーワールドだった。
男の腕を掴んで水槽を見る内に自然と笑顔になり、シャチのパフォーマンスで豪快な水しぶきを避ける頃には身体よりも先に心が通じ合っていた。
「帰ろうか。もう一つ見せたいものがある」
と、言う言葉は海をキラキラ照らしながら昇る朝陽を男の腕に抱かれて見る期待を抱いたが車はアクアラインに向かい夕陽を見ることだった。
カップルや家族連れに交じって、海ほたるの展望台で潮の匂いを胸いっぱいに吸い込んで夕陽を見ながら満足そうな男の横顔を見る内に、奥様のいる男にこれ以上の期待を抱くのは間違いだったと思うようになっていた。
アクアラインを都心に向かって走る車中で夕食をしようと誘われた時は苦い思いで下着などお泊りセットを入れたバッグを無意識で抱えて、はいと応じた。
お台場にあるホテルに着くと男は小さなバッグを持ってフロントに向かった。
食事を終われば家に送ると言われてデートは終わりかなと思っていたら予期せぬ展開に心が弾んだ。
食事を終えて男が予約していた部屋に入ると、ワインクーラーに浸かったシャンパンが用意されており、しゃれた店は知らないと言った男の言葉を想い出して新鮮な驚きと、きっと以前にも同じことをされた名前も顔も知らぬ女性に嫉妬心が芽生える。

周囲の建物から洩れる明かりや街路灯が暗い海を煌びやかに照らし、レインボーブリッジを走る車のライトが果てることなく続く景色がバスルームの窓に一幅の絵のように広がる。
バスタブに浸かった桜子は背後から抱きかかえてくれる男に身体を預け、明かりが海を照らしレインボーブリッジを走る車のライトを見つめても飽きることがなく、そんな眺望と共に味わうシャンパンは男の胸に顔を埋める予感と共に目元を朱に染めて心臓は早鐘を打つ。

目隠しされたせいで目の前の出来事は見えず、男と初めて会った日から初めての夜まで走馬灯のように蘇る。そうだ、あの日も目隠しされた。
「初めての時も目隠しされた。視覚を奪われると触覚や聴覚、嗅覚などが鋭敏になり性感も高まるはずだよと言った。すごいの、身体も気持ちもビリビリ敏感になって、あなたの指や舌だけではなく言葉や吐く息さえもが私の性感を昂らせるの」
「そうだった、初めての時も目隠しをした……今日は手を縛っちゃおうか」
バスローブの紐を拾い上げた男は桜子の両手を後ろ手に縛ってしまう。
「痛くない??我慢しなくていいからね」
「イヤッ、今は優しさなんか欲しくない。痛いくらいにギュッと縛ってほしい」
「クククッ、可愛いな……」
目隠しで視覚を奪い、後ろ手に縛って桜子を支配した男は背後から包み込むようにして両手を股間に伸ばし、花蜜を滴らす割れ目の感触に支配欲を満足させる。
「独り寝の夜はあなたに優しく愛されることを夢見てオンナノコを濡らしていたけど、本当のあなたは私の想像よりも意地悪……目隠しだけじゃなく両手の自由を奪われた。ウフフッ、ゾクゾクする」
そんな言葉を聞きながら男の舌は耳の裏を這い、耳朶を甘噛みして桜子がブルッと震えると首をゾロッと舐め上がる。
「すごいことになっているよ。ドロドロの蜜が涸れることなく溢れている……舐めてごらん……美味しいだろう??」
割れ目で戯れる指が蜜を掬い取って桜子の唇に擦り付けると、静かに口が開いて指をしゃぶり、舌がねっとり絡みつく。

「オレのモノをしゃぶられているような気がするほど気持ちいい。成績の好い生徒にご褒美だってしていないだろうな??」
「ウフフッ、妬いているの??どんなご褒美か経験させてあげる」
言い終えた桜子は抱きかかえる男の手からすり抜けるようにして身体の向きを変え、そのまましゃがみ込みざま宙を睨む怒張を口に含む。



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ちっち

Author:ちっち
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